「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、バジリカータ州の「ランゾーラ」が手がける「モナーデ2016」をご紹介します。
バジリカータ州はイタリア南部、「ブーツ」の「かかと」のプーリア州と「つま先」のカラブリア州の間に位置しています。山岳地帯が多いため交通の面でほかの州から孤立し、独自の文化が築かれてきたという点に、興味をかきたてられる州です。有名な見どころは、マテーラという町にある岩山に掘られた洞窟住居群で、ユネスコの世界遺産にも登録され、はやくも旧石器時代からこの地に人々の営みがあったともいわれています。
ワイン造りは古代ギリシャの植民地時代から行われてきましたが、山がちな地形のため生産量は決して多くありません。そんなバジリカータ州のワインを代表するのが、紀元前にギリシャからもたらされた「アリアニコ」というブドウで造られる赤ワインです。
石灰質泥土土壌を好む品種で、このブドウ100%で造られる代表的なものに、DOC「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」があります。休火山「ヴルトゥレ山」の麓に生産地域が広がり、この銘柄のうち、より長期熟成の「スペリオーレ」は、バジリカータ州唯一のDOCGに認められています。DOCで10カ月以上、DOCGは3~5年の熟成期間が定められています。
同じくアリアニコ100%のワインとして、バジリカータ州の北西に接するカンパーニア州の「タウラージ」があり、1993年に「南イタリアで初めて」DOCGに認められました。3年以上の長期熟成が醸す風味は、北イタリアの「バローロ」や「バルバレスコ」と並んで称賛されています。
さて、ここまでDOCG(統制保証原産地呼称)、DOC(統制原産地呼称)認定ワインのお話をしてきました。これらはイタリア政府が定めた最上級、上級クラスの格付けを表すものですが、その下に位置づけられるIGT(保護地理表示ワイン)が、味わいの面で劣るというわけでは決してありません。地域や原材料ブドウ、混醸の割合、製法などがDOC、DOCGの規定からは外れるものの、生産者それぞれが、その地域の特色を見極めながら手がける上質なワインがとても多いのです。
今回ご紹介する「ランゾーラ」は、州東部のモンタルバーノに位置し、DOCの区分でいうとマテーラに属しています。1955年に25haのブドウ畑を開墾したことに始まり、ブドウに人工的な力を加えることを最小限にする哲学とともに受け継がれてきた家族経営のワイナリーです。こちらのワインは、自社農園のアリアニコを澱とともに24カ月間熟成させ、さらにフレンチトノーで3~4カ月、瓶内で6カ月の熟成ののちに出荷されます。
さて、我が家へやって来た「モナーデ2016」。うっとりしてしまうのは、ボトルから匂い立つ、そのアロマです。カシスやプラムなど黒系果実に、ほのかに入り混じる貝殻のようなミネラル香、どこかヒノキを思わせる心地よい香り、そして、シナモンやカンゾーのようなスパイス……。口に含んでみると、アタックには優しさを感じ、しだいにパワフルな果実味、ゆたかな酸とタンニンが広がり、後味にはアーモンドのようなコクを感じます。
お料理は、合いびき肉のボロネーゼソースとサルサクレーマ(ホワイトソース)を多層に重ねたラザニアを合わせてみました。熟成のもたらす奥行きとまろやかな味わいが、しっかりと寄り添ってくれます。
古くギリシャから伝来し、カンパーニア州より南の地方で栽培されるアリアニコは、イタリアの土着ブドウのなかでも、ひときわエキゾチックなイメージをかきたてます。力強いアロマ、長期熟成により生み出される雄大な味わいを、ぜひ堪能してみてください。
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