イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.52 心地よい香りに引き込まれる
白ワイン銘醸地のフリウラーノ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の「ヴィーニャ・トラヴェルソ」が手がける「フリウラーノ FCO 2019」をご紹介します。

フリウラーノ FCO 2019 イタリア語の響きって、なんだか楽しそうですよね。ソムリエ試験の勉強をしていたときも、イタリアワインの専門用語は、歌うように発音しながら暗唱しました。いっぽう、ドイツワインのルールにある地域名や畑名を口に出すときは、自然と低めの声で、おごそかなモードになっていたように思います。

 今回のワイン名であり、ブドウの名前でもある「フリウラーノ」も、やはり、なめらかに歌い上げるように発音したくなる語感。フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州を代表する白ブドウで、アーモンドの香りを含んだフレッシュな辛口ワインを生み出す品種です。

ワイナリー ヴェネト州の隣に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は、白ワインのレベルの高さで注目され、全体のワイン生産量に占める比率が76%とかなり高めです。とりわけ高級白ワイン産地として名をはせるのが、コッリオ・ゴリツィアーノ、コッリオ、フリウリ・コッリ・オリエンターリの3地区。1970年代に生産者たちの尽力によって、その名声が高まったといわれています。

 ヴィーニャ・トラヴェルソの創始者ジャンカルロは、長年夢見てきたコッリ・オリエンターリ地区で、1998年、ついに開業。地域固有の品種として一目置かれている、フリウラーノとリボッラ・ジャッラほか、フリウリらしいワイン造りに力を注ぎます。

親子@ワイナリー ワインをグラスに注いでみると、明るい黄金色の液体からキラキラと輝き、グレープフルーツやパイナップルの香りが漂います。爽快さと甘さのなかに、セージのような複雑なハーブのニュアンスも。口に含んでみると、ブドウから滴り落ちる果汁のようにクリアな果実味と、弾けるような酸味、そして苦みとナッツのようなコクが後味に広がり、余韻の長いワインです。

 白ワインにしては高めの14%というアルコール度数、ギュッとエキス分が凝縮した蜜のような香りは、時期を10日ほど遅らせ、糖度を上げてから摘み取っているためと考えられます。コールドマセレーション(冷温での醸し)と冷温発酵により、フレッシュな風味が閉じ込められ、心浮き立つ飲み心地です。

ブドウ収穫 この地方の食材として有名なのは、プロシュート・ディ・サンダニエーレ。イタリア最高峰とされるフリウリ州サンダニエーレ産の生ハムで、DOP(保護原産地呼称)に認定されています。このように、DOP(DOC、DOCG)は、ワインだけでなく、チーズや生ハムなどの食材の品質管理にも使われているのです。

 ただ、昨今は諸事情でイタリアの生ハムが手に入りにくくなっているため、実際にあわせてみたのはスペインのハモン・セラーノ。あれこれ付け合わせをプレートに盛り付けるうち、野菜のほうが主役のようになってしまいました。

料理とワイン とはいえ、やはり生ハムとフリウラーノは、思わずうなってしまうほど、さすがの相性。塩気と熟成感が口いっぱいに広がったあと、ワインをひと口含むと、果実味が丸みを帯び、苦みと酸味を伴って、なめらかな余韻へ導いてくれます。

 次点は、アスパラガス。オイルとビネガーの味付けを脱して、昆布かつお出汁をベースにした自家製和風調味料でマリネしてみると、アスパラの青々とした風味に、しみ込んだお出汁がじわり。ワインの繊細な香りが引き立つ組み合わせになりました。ナスは、酢漬けたまねぎと白胡麻を加えたヨーグルトソースを添えて、少しトルコ風? ミディトマトとカブは、はちみつとバジルでマリネしました。

 お墨付きの相性の生ハムをメインに、ちょっと冒険を楽しんだ初夏の一皿。皆さんも、「フリウラーノ」と歌うような気持ちで、梅雨どきの食卓を明るく楽しんでみませんか?

※本文中のデータは『日本ソムリエ協会 教本2022』を参照しました。


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