イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.53 表情豊かなイタリアNo.1ブドウ
長期熟成が醸すヴァニラの芳香

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「ヴァル・ディ・トロ」が手がける「レヴィレスコ・リゼルヴァ 2017」をご紹介します。

レヴィレスコ・リゼルヴァ 2017 毎回、当コラムを楽しく書いていますが、今回のラインアップを見て少しドキドキしています。この緊張感、いつかどこかで味わったことがあるような……思い当たったのは、札幌の編集プロダクションで観光情報誌の記事を書いていた頃のことです。

 土地柄、「ジンギスカン」「ラーメン」「スープカレー」の店を取材することが多く、それぞれ一度に紹介する店舗数は1020店ほど。「ひとつの特集内で、同じ表現を使わないように」という先輩のアドバイスに、新人の私は頭を抱えたものです。とくに困ったのが「ジンギスカン」。肉の種類はラムかマトン、輸入先はほぼ2カ国に限られ、しかも調理は概ね“食べ手”にゆだねられる料理です。そこで、“書き分け”のカギとなるのが「タレ」なのですが、これがまた「企業秘密」「秘伝ダレ」として、たやすく秘密を明かしてはもらえないのです。

 なぜこんな話になったかというと、今回ご紹介するワインのブドウ品種が「サンジョヴェーゼ」だから。イタリアの赤ワイン用ブドウのなかで、栽培面積ナンバーワン(53,865ha)を誇り、2位のモンテプルチアーノ(27,434ha)に2倍近く差をつけています。

ワイン集合イメージ ポピュラーな品種ゆえ、当コラムでサンジョヴェーゼ主体のワインをご紹介する機会も、ほかの品種より圧倒的に多く、これまでに8回ほど。ロゼ、デザートワインも含めると10回にのぼります。

 今回の「レヴィレスコ・リゼルヴァ」は、サンジョヴェーゼ100%。ブドウを手摘みし、果皮を漬け込んで味や香りを果汁に移す「スキン・コンタクト」を20日間おこない、圧搾、二次発酵の後、フレンチオーク樽で12カ月熟成されます。「リゼルヴァ」とは、その地域の規定のアルコール度数、熟成期間を超えたワインのことです。

ブドウ収穫風景 ガーネットに近い深みのある色調で、粘性が強く、ヴァニラのような甘い香りが漂います。カシスやプルーンなど、よく熟れた黒系果実、ナツメグ、シナモン、クローヴといったスパイスの香りの強さが印象的です。

 口に含むと、キュッと口元の引き締まるようなタンニンが主張したあと、凝縮した果実味がビロードのようになめらかに、酸味を伴って広がっていきます。サンジョヴェーゼのワイン全般に言えることですが、ワイン単体で味わうときよりも、食事と合わせてみることで、いっそう魅力を発揮しそうなワインです。

ワイン醸造風景 スパイス感の強さから、ナツメグをたっぷり使ったポルペッテ(肉団子)のトマト煮込みを合わせてみることにしました。家族にも評判のいい我が家の定番料理で、いつもはショートパスタを添えて主食を兼ねたメインにしています。今日は、塩麴と甘酒にひと晩漬け込んだ野菜のソテーを添えてみました。

 パン粉をたっぷり使い、パルメザンチーズを練り込んだポルペッテは、ふんわりと口当たりがよく、ナツメグと黒コショウが肉の旨味を引き立てます。タンニンはしっかりしているものの、チャーミングな果実味が表に出たワインに、適度な軽やかさと深みのあるスパイシーな挽き肉料理は、非常にしっくりとくる組み合わせです。

料理とワイン 野菜のなかでも、かぶやにんじんなど滋味豊かな根菜は、赤ワインによく合います。発酵調味料に漬け込むことで、水分が抜けて、いっそう甘味と深みが増し、ワインにぴったりの味わいになりました。

 品種は同じサンジョヴェーゼでも、生産地の気候風土、造り手の技術、醸造法などを反映し、皆それぞれ違う豊かな表情をもっています。「うまく書き分けられるかな?」という不安は見当違いだったと、いつもながら気が付くのです。これからも、一つひとつのワインの“声”にしっかり耳を傾けて、その魅力をお伝えしていけたらと思っています。

※本文中のデータは『日本ソムリエ協会 教本2022』を参照しました。


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