イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.51 イタリア食材の底力を実感!
地元で愛されるバルベーラと

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ピエモンテ州「ロッカ・ジョヴァンニ」の「バルベーラ・ダルバ・ピアンロムアルド2019」をご紹介します。

バルベーラ・ダルバ・ピアンロムアルド201 小説を読んでいたら、冷蔵庫の奥に眠っていたアンチョビの瓶詰で、真夜中にジャガイモのソテーを作るシーンが出てきました。つぶしたニンニク、赤唐辛子と一緒に、たっぷりのオリーブオイルでジューッと炒めた一皿は、深夜には“背徳の美味”に違いありません。こちらも夜だったので、想像するのは危険でした。 

 さて、我が家の冷蔵庫をのぞいてみると、使いかけ食材コーナーに、やはりアンチョビがありました。せっかくなので、アンチョビについてちょっと調べてみましょう。

 初めて知りましたが、「アンチョビ」は英語で、イタリア語では「acciuga(アッチューゲ/アッチューガ)」と呼ぶそうです。カタクチイワシを塩漬けにして熟成させたもので、その後オイル漬けにしたものが一般によく出回っています。地中海でとれるカタクチイワシは、やわらかく味もよかったので、古代ローマ時代ごろから保存食品・調味料として作られてきたそうです。生産の中心はシチリアなど南部ですが、北部でも盛んに消費され、料理によく使われてきました。

バーニャ・カウダ・イメージ そのひとつとして有名なのが、ピエモンテ州の郷土料理「バーニャ・カウダ」。オリーブオイルにアンチョビ、ニンニクを入れて温めながら、野菜につけて味わう、日本でもおなじみの料理です。アンチョビを使って、今回のワインに合う料理が、何か作れるかもしれません。

 その前にワインのご紹介を。バルベーラはブドウの名前で、イタリア各地で栽培される品種ですが、ピエモンテが発祥といわれています。DOC「バルベーラ・ダルバ」は、ともに高級ワインのDOCGである「バローロ」と、その弟分「バルバレスコ」と生産地域が重なるため、レベルの高い造り手のものも多く、かつリーズナブルなのが魅力です。

ピエモンテ風景 こちらの「ロッカ・ジョヴァンニ」もバローロの偉大な造り手で、バローロを生産する11地域のなかでも「5大産地」のひとつに数えられるモンフォルテ・ダルバ村にワイナリーがあります。バルベーラは樹齢60年のものを化学肥料や農薬を使わずに育て、発酵中のワインを静かにかき混ぜる伝統製法を用いながらステンレスタンクで発酵後、小樽で10カ月熟成されたワインです。

 グラスに注ぐと、紫を帯びた濃いルビー色で、香りはブルーベリーやドライイチジク、バラ、シナモン、山椒のようなスーッとした香りも。口に含むと、なめらかで密度の高い果実味が舌の上に広がり、喉ごしに、しっかりとした酸とタンニンが主張。長い余韻がしばらく続きます。タンニンがあるものの、酸の強さとベリーや花の芳香のせいか、全体としてあまり重さを感じさせません。

セラー さて、旬の宅配野菜にこのごろ続いている新玉ねぎを、アンチョビと合わせてパスタにしました。オリーブオイルにニンニク、赤唐辛子を入れて、弱火で香りを立て、玉ねぎを炒めます。アンチョビ、白ワインを加えて煮立て、茹で汁で味を調整し、茹でたてのパスタを絡めたら完成。素揚げ玉ねぎのトッピングがアクセントです。

 こんなに冷蔵庫のありあわせ料理で大丈夫かしら? と思いながら、ワインに合わせてみると……新玉ねぎの甘味を引き立てる、ニンニクと唐辛子の刺激的な香味が、ワインのアタックの強さと好相性です。アンチョビの濃厚かつ、まるみのある塩味が、なめらかに全体をまとめ、さらにワインの抜けるような酸がきれいに包み込んでくれます。

料理とワイン 何気ない料理に、コクと奥深い旨味をプラスしてくれる、発酵食品・アンチョビの底力をあらためて感じました。日本でいえば、仕上げにお醬油をたらり、の感覚かもしれません。

 特別に買い出しをせず、冷蔵庫から見繕った食材で作る一皿も、おうちワインならではの醍醐味。気負わず楽しめば、郷土料理とともに発展してきたイタリアワインが、きっと美味しく寄り添ってくれるはずです。


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