
畑に広がる実りとともに、新しいワインの始まりを感じる秋のトスカーナ
9月に入り、ワイナリーはいよいよ一年で最も活気にあふれた季節を迎えています。
糖度や酸、タンニン、色づきなどが最高の状態になるよう、ブドウは日々丁寧にチェックされ、最適なタイミングで収穫されます。
しかし、この時期の天候はワイン造りに大きな影響を与えます。大雨が降ると果実が水分を含んで果汁が薄まり、品質が落ちてしまうことも。そのためワイナリーでは、毎日天気予報を確認しながら、ブドウの成熟度や健康状態を見極め、最良の収穫日を判断しているのです。
収穫されたブドウはすぐにワイナリーへ運ばれ、醸造が始まります。品種によって収穫のタイミングが異なるため、この時期は常に収穫や仕込みの作業で賑わっています。まさに「一年の集大成」といえる季節です。


そんな収穫期真っ只中のワイナリーより、トスカーナのVal di Toroをご紹介します。
Val di Toroについて
2003年に設立されたVal di Toroは、有機栽培をベースに、自然の力と人の手を調和させながら、細部にまでこだわったワイン造りを行っています。
オーナーはシチリア出身のAnnaさんと、イギリス出身のHughさん夫妻。もともと2人はイギリスで暮らしており、Annaさんは株式仲買人、Hughさんはファンドマネージャーとして金融の世界で活躍していました。しかし「自分のワイナリーを持ちたい」というAnnaさんの長年の夢を叶えるため、夫妻はトスカーナに移住し、新たな人生をスタートさせたのです。
ワイナリー名のVal di Toroは、イタリア語で「雄牛の谷」を意味します。かつてこの土地が牧場で、マレンマ牛や雄牛を飼育していたことに由来しているのだそうです。
ワイナリーへのインタビュー
Val di Toroについて、9月初旬Annaさんに色々と聞いてみました。
Q. 収穫スケジュールを教えてください。
A. チリエジョーロ※ は8月中旬に、ヴェルメンティーノは8月下旬に収穫を開始しました。
9月初旬以降にロゼワイン用のサンジョヴェーゼ、そしてその直後に赤ワイン用のサンジョヴェーゼの収穫が始まります。
※ チリエジョーロとは、主にトスカーナで栽培されている黒ブドウ。イタリア語で「小さなチェリー」の意。サンジョヴェーゼの先祖との説もある。
Q. ロゼワイン用と赤ワイン用のサンジョヴェーゼの主な違いは何ですか?
A. ロゼワインには若い畑のサンジョヴェーゼを、赤ワインには古い畑のサンジョヴェーゼを使用しています。
Q. 今年のヴィンテージはいかがですか?
A. 夏は気温の変動が激しかったですが、今のところブドウの成熟は概ね順調です。量と品質は良好になると思います。
近年の気温の上昇はワイン造りにとって非常に大きな課題となっています。今のところは何とか対応できていますが、今後については懸念しています。
Q. 金融業から一転、ワイナリーを設立し大変だったことは何ですか?
A. 全く異なる、しかも非常に複雑なビジネスを一から学ばなければなりませんでした。ブドウの植え付けから始まり、ワイナリーの建設、様々な種類のワインとラベルの生産はすべてが複雑でした。
最も困難だったのは、市場ではまだ知られていない自分たちのワインを買っていただき、長年にわたり支えてくださる個人のお客様や販売業者の方々と、信頼と親密な関係を築いていくことだったと思います。
Q. 具体的にワイン造りをどのように学び、知識を積み重ねていったのでしょうか?
A. 幸運なことに、創業当初から非常に優秀な醸造学者や農学者のプロフェッショナルチームに支えていただき、貴重なアドバイスを受けることができました。
その中で多くを学び、実際に現場で行動しながら試行錯誤を重ね、何が最もうまくいくかを見極めることで、私たちにとって最善の方法を身につけていったのです。
Q. ワイン造りにおける哲学やモチベーションは何ですか?
A. 私たちは、トスカーナ地方特有で古くから使われてきたブドウ品種でワインを造りたいと考えました。それによってワインが産地の個性を存分に表し、その土地を代表する存在になると信じているからです。
最終消費者にとって手に取りやすい価格でありながら、可能な限り最高品質のワインを造ること、これが私たちの理念です。
Q. 特に力を入れている点や誇りに思っている点はありますか?
A. すべての工程に力を注いでいますが、特にロゼワインの醸造には大きな誇りを持っています。
最高のロゼを造るために特別に植えて収穫したブドウを使用し、果汁は圧搾せず、房の重みで自然に流れ出たものだけを使います。こうして生まれるワインは、果実味豊かで鮮やかな色合いを持ち、よりエレガントな味わいに仕上がるのです。
Q. 趣味や余暇の過ごし方について教えてください。
A. 料理が好きで、料理とワインの味の組み合わせを発見することが一番の趣味です。
Q. 特におすすめの料理の組み合わせをいくつか教えていただけますか?
A. 私のお気に入りの組み合わせは、アサリのスパゲッティと《アウラマリス》低温でじっくり火入れしたラム肉と《レヴィレスコ》、香ばしく焼き上げたサーモンと《アンナズ・シークレット》です。
Q. 日本のお客様にメッセージをお願いします。
A. ぜひ様々なイタリアのブドウ品種を試してみてほしいです。イタリアは世界で最も多くの土着品種を持つ国なので、様々なワインを試すことで、お客様は一生忘れられない発見の旅に出られると思います。
最後に
夢を追いかけ、ゼロからワイナリーを築き上げた夫妻。彼らの挑戦は決して容易なものではありませんでしたが、情熱と努力、そして土地への深い敬意が積み重なり、お客様から愛されるワイナリーとなりました。
背景にあるストーリーも感じながら、ぜひワインをお楽しみください。


アウラマリス 2021
繊細でフルーティーな独特の香りを持つヴェルメンティーノに、ギリシャが起源と言われる果実味豊かなグレケットをブレンド。リンゴ、洋梨など果実やグリーンハーブのような香りが広がりフレッシュでふくよかな印象です。いきいきとしたミネラル感と、後味にほのかな苦みを感じます。
¥4,180(税込)

レヴィレスコ 2019
鮮やかなルビー色で、チェリーやラズベリーなど熟した赤い果実を思わせるパワフルで力強い香り。口に含むとジューシーな果実味と甘やかなスパイスの味わいが、のびやかに広がります。
¥4,620(税込)

アンナズ・シークレット 2021
サンジョヴェーゼ 100%のロゼワイン。やわらかなピンクの色調で、イチゴ、ベリー類、柑橘類などが入り混じったチャーミングな香り。味わいはドライで、フレッシュな果実味とスパイシーな複雑味が調和しなめらかでボリューム感のある辛口です。
¥4,400(税込)
ヴァル・ディ・トロ 2016
濃いルビーレッドの色調で、ブラックベリーやヴァニラ、オークの香りに、コショウなどのスパイス感が印象的。熟成するほどに酸がまるみを帯びるサンジョヴェーゼ、まろやかなタンニンを持つモンテプルチャーノが美しく調和し、しっとりとした飲み心地です。
¥6,600(税込)
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