「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「ヴァル・ディ・トロ」が手がける「アンナズ・シークレット 2018」をご紹介します。 「ワインが好き」と言うと、「赤と白、どちらが好きですか?」と尋ねられることが多いですが、いずれは選択肢に「ロゼ」が仲間入りするのではないでしょうか? とくに春先、ワイン売り場に桜色のロゼワインがずらりと並ぶ様子は圧巻です。ボトルから透けて見える華やかなピンク色にお洒落なラベルが映え、「贈り物に」「家飲み用に」と買い求めていく人たちを見ては、その人気ぶりを実感しています。
じっさい、ロゼワインの世界的産地、南仏プロヴァンスを統括するプロヴァンスワイン委員会(CIVP)によると、1990年以降、ロゼの消費量は増え続け、25年間で約3倍にまでなりました。さらに、俳優や映画監督など著名人がロゼワインのレーベルを持ち、SNSに「映える」こともあいまって、ここ数年は「世界的なロゼブーム」となっています。 「一時的なブームには乗っかりたくない」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。ロゼの歴史は古く、ギリシャ人がプロヴァンスにブドウを持ち込んだ紀元前600年ごろから造られていたといわれています。太陽の降り注ぐ地でヴァカンスを楽しむライフスタイル、新鮮な野菜、魚介、ハーブの香り立つ南仏の食と結びついて発展してきた歴史があるのです。
ロゼの製法を簡単に説明すると、基本的に黒ブドウ(赤ワイン用のブドウ)から造られます。発酵の開始前、または果皮や種子を漬け込む「醸し」の初期に、液体だけを抜き取って発酵させる方法と、白ワインの製法を用いて、はじめに「圧搾」をして果皮や種子を取り除き、そのとき自然に色の移ったロゼ色の果汁を発酵させる方法がポピュラーです。3つめの製法として、黒、白ブドウを混ぜた状態で発酵させる「混醸法」があります。
さて、イタリアにおいても、地域固有のブドウでロゼワインが造られてきた歴史があります。「ロゼ」に当たる「ロザート」のほか、明るい色調のロゼを指す「キアレット」、赤ワインに近い色調まで含めた「チェラスオーロ」と呼び方もさまざまで、ブドウ品種や地域性によって、色や味わいにバリエーションが生まれてきました。
今回の「アンナズ・シークレット2018」は、イタリアで最もポピュラーなブドウ、サンジョヴェーゼが使われています。ワイナリーはトスカーナ州南部マレンマの海岸線から8㎞、海抜90mの場所にあり、温暖な気候とイオニア海からの風、水はけのよい火山性石灰質の土壌に恵まれた畑で、化学肥料を使わず育まれ、ピュアな果実味をそのまま閉じ込めたような1本です。 淡いピーチピンクの色調で、ラズベリー、ピンクグレープフルーツ、梅、桜の葉、コショウの香りを感じます。口に含むと、ベリーのように甘酸っぱくフレッシュな酸味、後味には、かすかなほろ苦さとピリッとしたスパイス感があり、フレッシュ&フルーティーかつエレガントな印象です。
清々しくクリアな味わいには、脂が控えめで、みずみずしい風味の食材が合いそうです。都内の青果店に並び始めたそらまめを手に取り、塩茹でしてエビと和えた一皿に。ふわりと広がる甘み、初々しい青さのそらまめ、身が締まってプリプリのエビは、甘さの中に塩味とコクを感じます。ワインにえぐみが出ないように、ドレッシングは酸味を控えて白ワインビネガーをごく少々、オリーブオイル、塩、さらに刻んだ黄パプリカとトマトを混ぜると、フルーティーなワインの要素にぐっと寄り添ってくれます。
日本では、「甘口ロゼ」や特別な席の「ロゼ・シャンパン」のイメージが強いところから、しだいに「食事に寄り添う辛口ロゼ」が定着しつつありますが、その味わいもじつに多様です。「白と赤の中間」に終わらず、ブドウ品種や生産地域から一つひとつの「ロゼの個性」を味わってみると、ワインの楽しみがさらに広がっていくはずです。
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※こちらのワインは「読むワイン」で紹介されたヴィンテージとは異なります。風味や特徴に若干の違いがある可能性がございますのでご了承ください。