「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ピエモンテ州の「リウッツィ」が手がける「バルベーラ・ダスティ・スペリオーレ“ニッツァ・シル” 2013」をご紹介します。
深いガーネット色の液体から漂ってくる香りに、思い出すのは、すっかり満ち足りたディナーの終盤、メインディッシュとともにサーヴィスされた赤ワインのあまりの芳しさに、グラスを手に取る前から夢見心地になってしまう、あの感じです。食事のクライマックスに楽しむ“主役ワイン”としてご紹介したい「シル」は、「リウッツィ」を運営する兄弟が母親の愛称を冠し、権威あるワインガイド「ヴィニ・ディ・イタリア」でも高ポイントを獲得した渾身の1本です。
使われているのは、酸とタンニンのゆたかな“赤ワインらしい”風味を楽しめる「バルベーラ」というブドウで、イタリア全土で栽培されていますが、「リウッツィ」のあるピエモンテ州アスティ県のモンフェラートが発祥地です。丘の上にあるワイナリーは、寒暖差が大きく日照に恵まれ、砂と石灰粘土質の土壌が品種の味わいを最大限に引き出します。DOCG「バルベーラ・ダスティ」の中でも、特定の地区のみ表示できるサブゾーン名「ニッツァ」と併記され、数ある栽培地において最高品質のブドウを伝統製法で醸し、2年以上も熟成させた格別の味わいです。
グラスを回すと、液体が壁を伝ってゆっくりと流れ落ち、強い粘性からアルコール分の高さがうかがえます。香りは、ドライのイチジクやプルーン、シナモンやクローヴのスパイス類、ヴァニラ、枯れ葉や紅茶のような熟成香が入り混じり、非常に深みのある芳香です。口に含むと、アタックはなめらかで濃密なタンニンを感じ、角のとれたソフトな酸味、いきいきとした果実味がありつつ辛口、長い余韻がしばらく続きます。
ピエモンテは冬季五輪開催地のトリノがある州で、冬の寒さの厳しい地域にあって、郷土料理は日本でもおなじみの「バーニャ・カウダ」や、牛かたまり肉を長時間煮込んだ「ブラサート」など濃厚な味わいが主流、アルバ名産の白トリュフ、青カビチーズのゴルゴンゾーラなど美食の地としても有名です。フランスにルーツをもつサヴォイア王家の影響を歴史的に受けたことからも、長期熟成型の高級ワインが好まれ発展してきました。その代表格はネッビオーロから造られる「バローロ」「バルバレスコ」であり、もう少しカジュアルに地元で愛されているのが、バルベーラのワインです。
食事の進みそうな味わいに刺激され、まずはバルベーラと相性の良いサラミに合わせてみると、脂のうまみにワインの酸がすっきりと寄り添って、ピリリと効いた香辛料も抜群の相性です。次は、北イタリア産の熟成チーズを。シャリシャリとした食感にうまみの凝縮したパルミジャーノ・レッジャーノは、ワインに秘められたバラのような香りがフワリと花開く印象です。ゴルゴンゾーラには甘口の「ドルチェ」もありますが、刺激的な味わいの「ピカンテ」を選んでみると、ワインの輪郭がくっきり際立って、まったりとしたチーズを引き立てます。
“本日のメイン”は、豚バラ肉とソーセージ、白いんげん豆を、ローリエやタイムとともにトマトで1時間ほど煮込んだ、フランス南西地方の郷土料理「カスレ」風です。トロッとした口当たりのソースに、肉のうまみとハーブの香りがとけ込み、ワインの熟成感、奥行き感にも負けない味わいとなりました。
春から夏へ、季節とともにワインも泡や白、ロゼなどすっきりしたタイプへシフトしていきますが、たまには重厚な赤ワインをじっくり味わいたい、そんな気分のときにぴったりです。お料理はちょっと手間をかけても、あるいは手軽なシャルキュトリーでも、クラシックで優美な味わいを気負わず楽しんでみてはいかがでしょうか?
「リウッツィ」の「バルベーラ・ダスティ・スペリオーレ“ニッツァ・シル” 2013」の詳しいご紹介はこちら
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