「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、プーリア州の「ヴァローネ」が手がける「カステル・セッラノーヴァ2014」をご紹介します。
「読むワイン」では、第3回と第6回でも「ヴァローネ」のワインをご紹介しました。今回を含め、3つの赤ワインに共通して使われているのは、「ネグロアマーロ」というブドウです。
ネグロアマーロの栽培の中心はサレント半島で、イタリアの「ブーツのかかと」に位置するプーリア州のなかでも、とくに海に突き出したエリアです。外側のアドリア海から内側のイオニア海までの距離はわずかに30~50kmほど。高い丘陵地もなく風通しのよい土地と、石灰質泥土壌にマッチして、古くからプーリア土着のブドウとして残されてきました。
1976年にプーリア州のDOCに認められた「サリーチェ・サレンテイーノ」をはじめ、地元ではネグロアマーロを主体にした上質なワインが造られてきました。その一方で、品種特有の黒っぽい濃厚な色味と、アルコール度数の高いワインを生むことから、イタリアのほかの地域やフランスにおいては、長年、ワインを補強するための役割を担ってきたそうです。
ひとたび、ネグロアマーロの香りにふれてみると、黒い木の実や森、バラの花びらのような芳香の入り混じった深い香りに引き込まれ、補助的なブドウとして表に出てこなかったのはもったいない……と感じてしまいます。
今回の「カステル・セッラノーヴァ2014」には、ススマニエッロというブドウが3割ブレンドされており、こちらもプーリア固有の希少な品種で、酸の豊かなエレガントな風味をもたらします。有機栽培にこだわった2種のブドウを手摘みし、スティールタンクで発酵後、オーク樽で12カ月熟成させ、カカオやバニラのようなブーケが心地よく感じられます。
ワインの香りは、ブラックベリーやドライチジク、松や樹脂、バラなど、深みがあって複雑、口に含むとトロリと優しい口当たりに、甘酸っぱい果実味と主張のあるタンニンが魅力的な野性味を添え、のど越しは辛口、アルコール度の高さに喉が熱くなるような感覚を覚えます。
タンシチューやミートソースなど、スパイシーな煮込み、シンプルなグリルなどお肉料理は幅広く合いそうですが、今回はあえて野菜料理を合わせてみました。ナスの美味しい季節ですね。南イタリア風の揚げナスのレシピを見つけて、作ってみました。素揚げしたナスに、塩とパルミジャーノ、ケイパーとバジルを絡めた一品です。トロリとやわらかなナスに、油とパルミジャーノのコク、バジルの複雑味、粗塩のシャリっとした食感が加わって、野菜単体とは思えない満足度の高いおつまみになりました。ひと口のなかに緩急があり、優美さとワイルドさが共存するワインに、味わう部分によって表情の違う素朴な料理が、ちょうどいい具合です。
穀物や野菜、豆など、食材の宝庫で、イタリアの食文化を支えるプーリア州。地域固有のブドウを醸した芳醇な赤ワインとともに、“食欲の秋”の始まりを楽しんでみてはいかがでしょう?
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