イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.47 地道な開墾に始まったブドウ園
信念もって手摘みするブレンド

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、バジリカータ州の「ランゾーラ」が手がける「マテラ モンス・アルビウス2018」をご紹介します。

マテラ モンス・アルビウス2018 このコラム「読むワイン」を書き始めて、もうすぐ50回になります。イタリア20州のうち、8州の生産者のワインを扱うレアーレカンティーナには、ここでしか出会えない商品が多いので、毎回楽しみです。

 なかでも、イタリア南部・バジリカータ州のワインを味わう機会は、これまでほとんどありませんでした。州面積の約半分を山岳地帯が占めているため、生産量が少ないのです。また、他国に支配された歴史から、経済発展が遅れたことも一因で、州のワインで知名度が高いのは、DOC「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」のみと思われます。なお、このうち長期熟成の「スペリオーレ」が、州で唯一DOCGに認定されています。

 一方で、ワイン生産の歴史は古く、紀元前の古代ギリシャ時代からワイン用ブドウが植えられていました。そんな土地のポテンシャルに魅せられ、1955年、現オーナーの先々代が苦労の末、ブドウ畑を開墾したことに「ランゾーラ」の歴史は始まります。

家族写真 イオニア海を見下ろす丘と平野のあいだ、南斜面に位置するブドウ畑は、海からの風と降り注ぐ太陽の日差しが、イタリアらしい果実味に富んだブドウを育むのに最適なロケーションです。

 今回の「マテラ モンス・アルビウス」は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プリミティーヴォが使われています。ボルドー系品種に、イタリア南部の伝統品種プリミティーヴォがブレンドされているのが、この土地らしいですね。手摘みしたブドウをステンレスタンクで醸した後、ステンレスタンクで24カ月、さらに瓶内で6カ月熟成してから出荷されます。

ワイン製造イメージ グラスに注ぐと、濃厚なルビーレッドの色調で、縁の色は明るく澄んでいます。香りには、よく熟れたラズベリーやプラム、カンゾーやクローヴなど甘いスパイスのニュアンスもあります。

 口に含むと、アタックはまろやかで、果実味とヨーグルトのようなしなやかな酸味が広がり、適度なタンニンも感じます。カベルネのタンニンとメルローの豊満さ、そこにプリミティーヴォらしいスパイシーな果実味が加わって、軽やかさとコクをあわせもつ、飲みごたえのある赤ワインです。

 合わせる料理をイメージして、ふわりと口当たりは軽く、滋味豊かなレバーを思い浮かべました。塩、コショウを振った鶏レバーをバターでソテーし、バルサミコで調味、フライパンに残った旨味を赤ワインでこそげてソースに。

料理とワイン バターの風味をまとった鶏レバーは、香ばしく、しっとり。なめらかな食感に秘めた濃厚な旨味に、程よいタンニンが引き合い、赤ワインのきれいな酸味が後味を上品に引き締めます。

 饒舌ではないのに、ひとたび口を開くと、語りの深さにたちまち魅せられてしまう―そんな人柄を思わせるペアリングになりました。世界遺産に登録される洞窟住居のあるマテーラの土地、そこで地道にコツコツ譲れない美学をもってワイン造りを続ける生産者の姿に、もしかすると通じるものがあるかもしれません。


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