「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の「ヴィーニャ・トラヴェルソ」が手がける「スキオッペッティーノ・ディ・プレポット FCO 2014」をご紹介します。 イタリアワインの大きな魅力は、土着ブドウの種類が豊富で、それらが伝統的に守られ、飲み継がれている点だと思います。
イタリアの黒ブドウ(赤ワイン用品種)の栽培面積をみてみましょう。1位から順に、サンジョヴェーゼ、モンテプルチアーノ、メルロー、バルベーラ、ネグロアマーロと続きます。トップ5にランクインしているのは、メルロー以外すべてイタリアの土着品種とされるブドウです。(2015 出典:OIV/『日本ソムリエ協会 教本2022』に掲載)
こういったイタリア国内外でもメジャーな土着ブドウのほかに、生産量こそ少ないものの、地方独自の土着ブドウも数多く存在しています。
そのひとつが今回ご紹介する「スキオッペッティーノ」。イタリア北東部のフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州および、フリウリと国境を接するスロヴェニアで栽培されています。色が濃く、黒コショウのようなスパイシーな芳香を持つ品種です。 フリウリ州のなかでも、スキオッペッティーノがとりわけ生産されているのが、「ヴィーニャ・トラヴェルソ」のあるスロヴェニア国境の街・プレポット。石灰性粘土と砂質石灰岩が交互に層を成す「ポンカ」と呼ばれる土壌に特徴を持ち、果実味のいきいきとしたポテンシャルの高いブドウが育ちます。
このブドウを、果汁を抜いて果皮や種子を空気に触れさせてから果汁を戻し、色素とタンニンを抽出する「デレスタージュ」の手法を使って、木樽で発酵。その後、ステンレスタンクと新樽、旧樽の両方を用いて12カ月熟成させ、さらに瓶内熟成を行います。 グラスに注ぐと、黒みを帯びたルビーレッドの色調で、色のイメージにぴったりのカシスやブルーベリー、よく熟したラズベリーの香りがします。鼻をくすぐるような黒コショウ、クローヴ、シナモン、枯れ葉、針葉樹など多層的で、弾けるようなスパイス感と心落ち着くヒーリング系の香りが、心憎いバランスです。
口に含むと、非常にソフトなアタックで、ジャムのような煮詰めた果実の甘味と穏やかな酸味、溶け込んだタンニンがじわじわと口中に広がっていきます。
お料理にも複雑味を持たせたいところ。かつ重すぎないメニューが良さそうです。イタリア料理教室で教わった「鶏もも肉のファルシー」を作ってみました。
ハムとドライフルーツ、ナッツ、少量の卵を混ぜた合いびき肉を、均等な厚さにした鶏もも肉で巻き、タコ糸で縛って形を整えます。小麦粉をまぶして表面にこんがりと焼き色を付けたあと、ワイン、トマトソース、フォンドヴォーを加えて煮込んでいきます。 フィリングに入れたドライフルーツとナッツ(今回は干し柿とクルミを使用)が風味や食感にアクセントを添え、お肉を3種類とフォンドヴォー(スーパーでも買える凝縮タイプ)を使うことで、味わいに奥行き感が出ます。赤ワインと相性抜群で、我が家のおもてなしの定番メニューですが、ジャムのような凝縮した甘味とスパイスの風味が際立った今回のワインにとびきりマッチしました。
山椒を効かせた鶏の照り焼きや、ナツメグをたっぷり加えたハンバーグなどにもよく合いそう。ふだんの家庭料理にちょっとスパイスを効かせて、プレポットならではの土着ブドウのワインを、ぜひ気軽に楽しんでみてください。
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