「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、サルデーニャ州の「スラウ」が手がける「シンカル カンノナウ・ディ・サルデーニャ2017」をご紹介します。
サルデーニャは、地中海に浮かぶ島のなかで、シチリアに次いで2番目に大きな島です。北東部の海岸沿いにある「コスタ・スメラルダ」などヨーロッパ屈指の高級リゾート地としても知られています。
ユニークなのは、海に囲まれているにもかかわらず、人々は通商や貿易を積極的におこなわず、「山の民族」として、羊を飼って暮らしを営んできたという点です。独特の文化形成に、大きく興味をかきたてられます。
地元の人たちが内陸部で生活するようになった背景には、古くから東ローマ帝国などの支配下におかれてきた歴史があるようです。
ワイン造りにおいては、平野部が20%以下と少なく、丘陵地帯の多くが岩に覆われているため、農業があまり盛んではなく、本格的に始まったのは、サヴォイア家の支配下にあった19世紀前後からといわれます。
さらに、1970年代末のイタリアワイン近代化の動きや、国際品種の積極的な導入とも一定の距離を保っていました。それゆえに、「乗り遅れた州」という見方もされていたようです。
しかし、こうした「孤高」のスタンスが、自分たちの文化を守り、独自の品種・味わいのワインを守り継いできたというのが、なんとも魅力的ではないでしょうか?
「スラウ」のワイナリーは、高級リゾートにも程近いアルツァケーナの街にあり、近代的な設備を備えて2009年にスタート、サルデーニャの代表品種、ヴェルメンティーノとカンノナウの2種類を中心に、ワイン造りをおこなっています。
オーク樽で熟成させたカンノナウ100%の「シンカル」は、濃厚なルビーレッドの色調。グラスを回すと滴が壁をつたってゆっくりと流れ落ち、よく熟したブドウを使った、アルコール分のゆたかなワインであることがわかります。香りはさまざまに感じますが、ダークチェリー、バルサミコのような煮詰めたニュアンス、クローヴ、カカオ、木のチップなど、呼吸を深くしてくれるような癒しの芳香です。
口に含むと、凝縮した果実味に、かすかに塩っぽいニュアンスが入り混じる、力強いアタック、そこへ伸びやかに抜けるような酸が、まるで景色を変えるように、味わいの洗練度を増していきます。
際立ったスパイス香とパワフルな味わいは、肉料理、なかでもジビエ類によく合いそうです。あくまで手軽な家庭料理に合わせるなら、鶏肉のカチャトゥーラ風がおすすめです。「アッラ・カチャトゥーラ」は「猟師風の」という意味で、イタリアでは、ウサギや鶏、仔羊などで作る煮込み料理です。
骨付き鶏モモ肉のぶつ切りがベストですが、手に入らなかったので手羽元で。塩・コショウしてから小麦粉をまぶして焼き色をつけ、野菜も炒めたのち、煮込み鍋に移して白ワインを煮詰め、ニンニク、トマト缶、ハーブとともにコトコト煮込めば完成です。簡単料理の味わいをランクアップするのは、鶏の骨から染み出すブイヨン。トロリと濃厚なソースに仕上がるので、ぜひ骨付きのお肉を使ってみてください。
ハーブは、ローズマリーとフェンネル(ウイキョウ)を使ってみました。フェンネルの甘く弾けるような香りが、優しい旨みの鶏肉に力強さを添え、スパイスの香りゆたかなワインと響き合うペアリングになりました。
ところで、カンノナウは、もともとスペインから伝わったアリカンテという品種で、フランスではグルナッシュと呼ばれています。
サルデーニャ特有の花崗岩砂質の土壌に育まれた、カンノナウの樽熟成ワイン。さんさんと降り注ぐ太陽と地中海の風をイメージしながら、ぜひ味わってみてください。
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