「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ヴェネト州の「オルネッラ・モロン」が2019年にスタートしたブランド「オンブレ・ディ・ピエトラ」の「プロセッコ ブリュット」をご紹介します。
4年前に家族でヴェネツィアを訪れました。子どもはまだ幼稚園児でしたが、街じゅうに運河や水路が走る光景に目を見張り、水しぶきを上げて走るヴァポレット(水上バス)での移動もすっかり気に入った様子でした。
到着して早々、中心部のサン・マルコ広場から、人がやっとすれ違えるくらいの細い路地を歩き歩き、扉を押したトラットリアの味が忘れられません。前菜の盛り合わせは、殻付きホタテに、シャコ、エビのグリル、イカのバジルソース、タコとセロリのマリネなど10種類もの海の幸に、真っ白なポレンタ(トウモロコシの粉をお粥のように煮たもの)が添えられ、ヴェネツィア最初の1杯を華やかに盛り上げてくれました。
乾杯に選んだのは、もちろんプロセッコ。ヴェネト州のDOCに認定されるスパークリング・ワインです。ハーフサイズを注文すると、トラットリアの名前が入った陶製のピッチャーでサーブされ、その気さくなスタイルが“現地感”たっぷり。その後に探検したスーパーの棚にプロセッコがずらりと並ぶ様子も圧巻でした。
こんな風に、地元で親しまれている発泡性ワイン「プロセッコ」ですが、その人気は世界的に見ても右肩上がりだといいます。土着品種・グレラを主体にした華やかなアロマと溌溂とした泡立ち、誰にでも好かれる味わいで食事を選ばず、カジュアルに楽しめる価格も魅力です。
さて、「DOCプロセッコ」に認定される産地は24,000ヘクタールと広大で、ヴェネト州のみならず、東隣のフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州にまたがっています。全体として、アルプス山脈が北からの冷たい風をさえぎり、夏季には冷たい風が山脈からアドリア海へ向かって吹き降りるため、昼夜の寒暖差が保たれ、グレラにゆたかなアロマが育まれます。シャンパーニュなどの高級スパークリング・ワインに用いられる「瓶内二次発酵」に対し、プロセッコに用いられるのは、大きなタンクに密閉して二次発酵を起こす「シャルマ方式」という製法。ブドウのアロマを残しながら、価格を抑えられるのが特徴です。
グラスに注ぐと、泡立ちは優しく持続的です。貝殻のような香りに、青りんご、洋梨、柑橘、そしてディルのようなハーブの香りも少々。口に含むと、生のグレープフルーツを齧ったときのような溌溂とした酸と微かな苦味が広がり、キレのよさと果実の優しい甘味をバランスよく保った中辛口の味わいが楽しめます。
ヴェネツィアの海の幸プレートを想って、旬の魚介類で前菜を作ってみました。スルメイカは輪切りにしてシンプルなバジル炒めに。イワシは手開きし、タイムと塩、オリーブオイルを混ぜ合わせたパン粉をまぶしてロールし、グリルしました。
カプレーゼ、カボチャにクリームチーズとミント、簡単な野菜の2品には、知人がスペインから直輸入している「レモンオリーブオイル」を合わせてみたのが今回のポイントです。グラナダの在来種の天然レモンを加えたエキストラバージンオリーブオイルは、フレーバーをつけたオイルとは一線を画す香り高さ。少したらすだけで、カプレーゼの味が決まり、カボチャサラダはお菓子のように芳しく上品な味わいに。美味しい調味料があるだけで料理が楽しくなりますね。
プロセッコは、魚介類に合わせると柑橘のフレーバーが際立ち、いきいきとした酸が食欲を刺激します。みずみずしい野菜類は、ワインのもつフルーティーな風味を膨らませるような印象です。
いよいよ夏本番。この季節ならではの手ごろな食材をササっと前菜に仕立てて、スーッと心地よい風が体に吹き込むようなプロセッコで、皆さんも乾杯してみませんか?
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