「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「カロッビオ」が手がける「キャンティ・クラシコ2016」をご紹介します。
イタリアの赤ワインといえば「キャンティ」を真っ先に思い浮かべる人もいるほど、日本でもポピュラーな銘柄かと思います。でも、「キャンティ」と「キャンティ・クラシコ」の違いって? という疑問の声も聞こえてきそうです。
話は18世紀までさかのぼります。1716年、メディチ家の支配下にあったトスカーナ大公国時代に、トスカーナ大公コジモ3世が、カルミニャーノ、キャンティ、ポミーノなど、ワイン産地の“境界線”を定めました。これは世界で初めての「原産地保護」といわれています。
その後、「キャンティ」のブランド名が人気となったために、「キャンティ」と銘打ったワインを造るエリアが拡大していきました。それらを区別するために、昔から「キャンティ」を造ってきた地域を「キャンティ・クラシコ」と呼ぶようになったのです。
1984年に「キャンティ」がDOCG(統制保証原産地呼称)に認定されたときは「キャンティ・クラシコ」もその一部でしたが、1996年には独立したDOCGとして「キャンティ・クラシコ」が認められました。主体となるブドウ・サンジョヴェーゼの使用比率や、最低アルコール度数、熟成期間なども異なる規定が設けられています。
今回ご紹介する「カロッビオ」のワイナリーは、「キャンティ・クラシコ」中心部のパンツァーノにあり、このエリアは「コンカ・ドーロ」と呼ばれています。その意味するところは、フランス・ブルゴーニュで珠玉の特級畑が連なる地帯「コート・ドール」と同じ「黄金の丘陵」。どれほどの銘醸地であるかが、おわかりになるかと思います。
「コンカ・ドーロ」は、十分な日照量に恵まれ、トスカーナを代表する2つの土壌、「アルベレーゼ」(石灰粘土質土壌)と「ガレストロ」(礫岩を多く含む泥灰土壌)が交互に重なり、水はけと保水力に優れた土壌をもちます。
「カロッビオ」の厳選したサンジョヴェーゼは、完熟を待って10月第1週から11月末にかけて収穫されます。実が小さく、果皮は硬く、色が真っ黒になるのが特徴で、タンニンが突出することなくバランスに優れたワインが生まれます。手摘みによる収穫、職人に注文するスラヴォニアンオーク樽、徹底した温湿度管理と、細部までこだわって醸造された、サンジョヴェーゼ100%の「キャンティ・クラシコ」です。
ワインの色調は落ち着いたルビーレッドで、縁の色は明るく見えます。カシス、クローヴ、カンゾー、黒コショウ、スミレ、ビーフジャーキー、枯れ葉など、さまざまな香りが感じられ、ブルゴーニュグラスに注いで、豊かな香りをしっかりと感じるのがおすすめです。
鼻をくすぐるようなスパイスとラム酒のような甘い香りに誘われ口に含むと、凝縮した果実味、やわらかく密度の高いタンニンを感じ、しっとりと落ち着いた旨みに酸がとけ込んで、ほのかな苦味を伴なった余韻が長く続きます。
ビーフステーキや肉の煮込み料理には間違いなく好相性ですが、ワインの中の旨み、どこか“出汁”のような旨みを感じ取って、和食とのペアリングを考えてみました。
鶏肉の照り焼きに山椒を挽いた一皿は、皮を香ばしく、中はふっくらと焼いた鶏もも肉に、味付けは醤油、日本酒、みりんを同量ずつ。ピリッと効かせた山椒が、エレガントでスパイシーなワインと響き合います。バルサミコで味付けしたレンコンと里芋、野菜の土っぽいニュアンスに、ワインの腐葉土のような香りが重なって、互いの旨みを引き立てあいます。
“熟成”“繊細”がキーワードの「和」の調味料や薬味にもスッとなじみ、旨みをさらに引き上げる、しなやかな味わいに、こだわりの「キャンティ・クラシコ」の実力を感じました。皆さんも、ぜひお気軽に楽しんでみてください。
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