「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「ヴァル・ディ・トロ」が手がける「ヴァル・ディ・トロ 2015」をご紹介します。
秋が深まり、朝夕の冷え込みが厳しくなってきましたね。コトコト煮込んだお肉料理が恋しくなる季節です。お肉の旨みも脂もソースにとけ込み、スパイスや香味野菜との調和が生まれる煮込み料理には、やっぱり熟成感のある赤ワインを合わせたいですね。
トスカーナ州がとりわけ好適地として知られる「サンジョヴェーゼ」は、イタリアの赤ワイン用ブドウの栽培面積において、2位の「モンテプルチャーノ」に2倍近い差をつけて堂々1位の品種です(『日本ソムリエ協会教本2022』より)。酸とタンニンの豊富なブドウで、熟成するほどに酸がまるみを帯びて、なめらかな飲み口に。今回ご紹介する「ヴァル・ディ・トロ2015」は、7年もの時間を経て、エレガントな味わいが際立っています。
トスカーナ南部のマレンマにあるワイナリーの名称「ヴァル・ディ・トロ」は、「雄牛の谷」の意味で、かつて遊牧地だった畑に由来しているそうです。オーナーの夫妻は、この土地へのリスペクトを込めて、サンジョヴェーゼ、モンテプルチャーノ、ヴェルメンティーノ、グレケットの土着品種のみをオーガニックで栽培しています。
なかでもバリエーション豊富に展開するのが、サンジョヴェーゼを主体にしたワイン。今回のワインはモンテプルチャーノを10パーセントブレンドし、優しくプレスした後、フレンチオークの大樽で24カ月、瓶内で12カ月熟成したのちリリースされています。モンテプルチャーノは、イタリア中部から南部を中心に栽培されるブドウで、フルーティーな味わいと豊かなタンニンが持ち味です。
グラスに注いだときに、部屋じゅうに広がる香りが、このブドウが手をかけて育てられ、大切に醸されてきたことを物語っているかのようです。バラやドライイチジク、シナモン、ヴァニラ、ヒノキのような樹の香り……ややオレンジを帯びたガーネットの液体がグラスの壁にしっかりと跡を残してゆっくり流れ落ちる様子にも見惚れてしまいます。
口に含むと、ボリュームいっぱいに果実の甘味が広がり、酸はしなやかで、タンニンはヴィロードのようになめらか、飲み干すときにはタンニンがしっかりと主張します。樹からこぼれ落ちそうな完熟ブドウを思わせる、ふくよかで、余韻の長いワインです。
お料理は牛スネ肉の赤ワイン煮込みを作りました。スネ肉に焼き色をつけてから、圧力鍋でトマト、タマネギ、ニンニク、ローリエ、赤ワインとともに煮込み、冷蔵庫で2日ほど寝かせて、旨みをしっかりとなじませています。
ホロホロとくずれるスネ肉に、野菜の甘味と香辛料の香り、赤ワインの熟成した旨みがとけ込んだソースが、やわらかでトロリとした口当たりのワインと響き合います。樽熟成で形成されたヴァニラの香りが、時間を止めるように優雅に漂い、適度な酸とタンニンがキュッと味わいを引き締め、次の料理のひと口をいっそう美味しく感じさせてくれます。
お料理を作るのも味わうのも、ワインを空気になじませるのも、すべて“ゆっくり”が似合うワインです。山々のあいまに、いくつもの丘陵地帯が続き、ブドウやオリーブの畑が美しい線を描くトスカーナの風景をイメージしながら、ゆったりとした心持ちで、楽しんでみてはいかがでしょう?
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