イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.42 南イタリアのプリミティーヴォ
果実味秘めてなめらかに熟成

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、バジリカータ州の「ランゾーラ」が手がける「プリムバッケ2018」をご紹介します。

プリムバッケ2018 以前、フレンチレストランでペアリングを楽しんだ際、「ニエルッキオ」というブドウの赤ワインをいただきました。フランス・コルシカ島のブドウ品種として記憶されており、珍しいワインを味わう気持ちになりましたが、じつは、イタリアでは「サンジョヴェーゼ」と呼ばれている超メジャーな品種です。

 このように、同じブドウ品種でも、国や地域によって呼び方の異なるケースがしばしばあります。ワインの資格試験の勉強では苦労する点でもありますが、ひとつのブドウ品種がなんらかの方法で、ときに海を越えて別の土地へ広まっていった証。そう考えると、壮大なロマンを感じます。

ブドウ畑 さて、今回のワインは「プリミティーヴォ」が100パーセント。南イタリアを中心に栽培されるこの品種の、ほかの土地での別名をご存じですか?

 答えは「ジンファンデル」。主にアメリカのカリフォルニア州で栽培されている赤ワイン用ブドウです。

 プリミティーヴォとジンファンデルは、どちらもDNAがクロアチアの特定の土着品種と一致していることが明らかになっています。アドリア海を渡って南イタリアのプーリアにもたらされたものがプリミティーヴォに、地中海を支配していたヴェネツィア共和国からオーストリア経由でアメリカ大陸へ渡ったものがジンファンデルになった、という説が有力のようです。

ワイン製造イメージ① ルーツを同じにする品種であっても、気候の違いや、ワインの製法の違いなどによって、味わいが大きく異なってくるのがワインの面白さ。そこにはもちろん、食文化や好みの違いも反映されているでしょう。

 ジンファンデルのワインは、親しみやすく、ジャムのような甘く凝縮した果実味を感じるものが多い一方、プリミティーヴォのワインはスパイスの力強さと豊かな酸が際立ち、食事に寄り添うワインといった印象を受けます。

 ランゾーラのワイナリーはバジリカータ州東部、地中海を見下ろす丘の上にあります。海からの風が吹き込み太陽の日差しが降り注ぐ、南向き斜面のブドウ畑から手摘み収穫したプリミティーヴォを使用し、木樽で34か月熟成させた1本を、テイスティングしてみましょう。

ワイン製造イメージ② ワインの色調は落ち着いた濃厚なルビーレッドで、香りには黒コショウやクローヴ、カシス、ドライプルーン、干した肉、梅の花のような芳しい香りも感じます。口に含んだときのアタックは、なめらかで柔らか。よく熟した果実味がとけ込んで、酸味が軽やかさを添える印象、心地よくビターな味わいと程よいタンニンを後味に感じます。

 バジリカータ州の地方料理として、サラミや羊肉の料理、羊や牛のチーズがよく食べられるそうです。春の訪れが待ち遠しいこの季節に、熱々のチーズ料理が食べたくなりました。

 道産子の私が、チーズとセットで連想するのはジャガイモ。北海道の生産者のジャガイモをマッシュして、細かく切った生ハムとモッツアレラチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノを散らし、さらにポテトをのせて、仕上げにパルミジャーノ、パン粉、ちぎったバターを散らし、こんがりキツネ色に焼き上げます。

料理とワイン カリカリのパン粉にバターの風味が染み込んで、ひと口目から食欲がそそられます。ふんわりとマッシュしたジャガイモは口当たりも味わいも優しく、トロリと伸びのよいモッツアレラ、生ハムの塩気がアクセントに。果実味をたたえながら熟成した、ビロードのようになめらかなワインが、染み入るように素朴な料理の味わいを引き立てます。

 はるか昔、クロアチアから南イタリアへ旅をして根付いた伝統品種・プリミティーヴォの味わいをぜひ堪能してみてください。


「ランゾーラ」の「プリムバッケ2018」の詳しいご紹介はこちら

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