イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.45 ティレニア海沿いの名物品種
遅摘みで引き出す濃厚なアロマ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、サルデーニャ州の「スラウ」が手がける「モンティディモラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ 2020」をご紹介します。

モンティディモラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ ヴェンデンミア タルティーヴァ2020 すっかり春めいてきました。華やかな香りの沈丁花、煙るように咲く姿の美しい桜、次々と蕾をほころばせる花たちに誘われて、香りのいい白ワインが恋しくなりませんか? 

 今回ご紹介するのは、イタリア南部、地中海に浮かぶ島サルデーニャを代表する白ワイン。やわらかでフルーティーなアロマをもち、海の近くの暖かい場所を好む「ヴェルメンティーノ」が使われ、DOCG「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」に認定されています。

 「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」地区の土壌は、古生代の花崗岩であることが大きな特徴です。水はけがよく、養分の少ない土壌のため、ブドウにストレスがかかって、収量が自然に低くなります。それによって、アロマの凝縮したブドウが育つというメカニズムです。

スラウのワイナリー 「スラウ」は、DOCGの中でも海岸に程近いアルツァケーナの街にある、2009年設立の比較的新しいワイナリー。訪れた人がワイン醸造のプロセスが見られるよう、オープンなセラーを備え、品質を保証しながらワイン造りに取り組んでいます。

 「モンティディモラ」は、ワイナリーの特別キュヴェ。収穫を遅らせてさらに果実味を凝縮させたヴェルメンティーノを用い、温度を低く保持しながら醸す「コールド・マセレーション」をはじめにおこなうことで、発酵を止めてブドウの果実味を引き出します。その後は、約半分をフレンチオーク樽で、残りをステンレスとコンクリートタンクで発酵させ、リッチな味わいに仕上げます。

セラー グラスに注ぐと明るい麦わら色で、黄色いリンゴやパイナップル、黄桃の香りが立ち、白コショウのスパイス、貝殻のような香りも感じます。アタックはボリューム感があり、アカシアの花、ハチミツ、桃といったなめらかで甘いニュアンスに、ライムのようないきいきとした酸が調和します。柑橘の皮のようなほのかな苦みとミネラル感が余韻に現れ、辛口の後味です。

 ティレニア海でよく育つヴェルメンティーノのキャラクターには、魚介類とのペアリングが王道です。なかでも、このワインがもつ、遅摘みと樽熟成のリッチな味わいには、コクのある魚貝類、甲殻類がよく合いそうです。

料理とワイン 買い物先でムール貝を見つけたので、エビとともに小鍋でピラフを炊いてみました。ニンニク、タマネギ、ニンジン、セロリと一緒にオリーブオイルで炒めたお米はつやつや光り、ふっくらとした食感で、貝とエビの旨味をたっぷり吸い込んでいます。ムール貝独特の塩味と厚みのある旨味、エビの濃厚な甘味に、ワインの骨太なミネラル感が寄り添った後、ボリューミーな果実味が花開くように膨らんでいきます。 

 ピラフやパエリアには「スペイン米」がよく合うようですが、今回は日頃から食べている日本米を使いました。オイルをしっかりまとわせ、水分量や火加減に気を付けて程よい食感に炊き上げれば、これでも十分。日本の食卓に欠かせない食材をワインにベストマッチさせるのも、楽しみのひとつだと感じています。

イメージ サルデーニャが誇る「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」。イタリア南部の島に思いを馳せていると、咲きそろう花と春の陽光から、たちまち初夏の海岸へと、気持ちが飛んでいきそうです。久しぶりに“明るい春”が訪れそうな喜ばしい気持ちを込めて、贈り物にセレクトしても。経験豊富なワインから、難しいこと抜きにワインを楽しみたい方々まで、きっと満足していただけるはずです。


スラウの「モンティディモラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」はこちら

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※こちらのワインは「読むワイン」で紹介されたヴィンテージとは異なります。風味や特徴に若干の違いがある可能性がございますのでご了承ください。