イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.50 バーベキューに持参したいNo.1
オーガニックのサンジョヴェーゼ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「ヴァル・ディ・トロ」が手がける「ロッソ・リベレ 2016」をご紹介します。

ロッソ・リベレ 2016 バーベキューやキャンプといった野外で楽しむレジャーが、最近ますます人気を集めています。皆さんは、ご予定ありますか?

 北海道で生まれ育った私は、アウトドア好きな父のもと、子どものころは、ひと夏に何度もバーベキューやキャンプを体験しました。その反動か、大人になってすっかり“インドア派”になったのですが、のどかな自然のなかで過ごした時間を時折懐かしく思い出します。

 朝と夜で表情の変わる森の匂いや、水平線に沈んでいく太陽、こんがり焼けた骨付きチキン、アルミホイルに包んでコンロに入れたジャガイモが焼き上がり、黄金色のバターを落とす待ちわびた瞬間!……どこからか食べ物の話に。そう、食いしん坊だけは、生まれたときから変わっていません。

 美しい景色、美味しい食べ物、そこに大人の楽しみ「美味しいワイン」が加われば、最高のアウトドア・シーンに間違いありません。いずれ私も……と想像していたところ、幸運にも、素敵なお庭でのバーベキュー・パーティーにお招きいただきました。

庭風景 さて、ワインは何を? 持参したのは、トスカーナ南部のマレンマにあるワイナリー「ヴァル・ディ・トロ」の「ロッソ・リベレ 2016」。トスカーナを中心にイタリアで最もポピュラーな品種、サンジョヴェーゼ100%のワインです。スミレのようなエレガントな芳香をもち、程よい酸味とタンニンがグリルしたお肉料理とぴったりの相性。手軽に開けられるスクリューキャップも、屋外向きですね。

 グラスに注ぐと、濃厚なルビーレッドの色調で、熟したブラックベリーやブラックカラントの香りが濃密。黒コショウやヴァニラの香りが心地よく鼻をくすぐります。

 「ヴァル・ディ・トロ」のブドウ畑では、サンジョヴェーゼが好む石灰質土壌を生かし、化学肥料を使わず栽培されています。手作業で収穫し、発酵させたのち、半分をフレンチオーク樽に取り分けて熟成。そのため、いきいきとした果実味を残しつつ、熟成されるほどまろやかになるサンジョヴェーゼのキャラクターが存分に発揮されています。

ソースを添えた肉とワイン さて、お肉が焼き上がったようです。塊の豚肩ロース肉は、塩、砂糖、水、ハーブ、香辛料などで作られるフレンチの技「ソミュール液」に一晩漬け込んで下ごしらえされ、今回の決め手はセロリの葉とクミン。カリッと香ばしい表面に、中は驚くほどやわらか、塩味と香味野菜の複雑な風味がしみ込んでいます。

 そのままでもご馳走ですが、ブラジルのシュラスコの定番ビネガーソース「モーリョ」を添えると、また格別の味わいに。お料理上手なゲストの手作りで、タマネギ、ピーマン、パプリカ、トマトなどをさいの目に切って、ワインビネガー、オリーブオイル、塩で調味したそうです。

 彩りの美しさもさることながら、お肉の旨味を引き立て、口の中をさっぱりとさせる爽やかな風味が食欲をそそります。香ばしく、適度な脂身をもった豚肉に、ワインの果実味とタンニンが濃密に寄り添い、すっきりと端正なソースとワインのきれいな酸味が手を取り合うかのような、絶妙なペアリングになりました。

バーベキュー お次はリブロース。ミックススパイスと岩塩をすり込み、お庭のローズマリーを添えて焼き、アルミホイルに包んでしばらく待ちました。こんがりと茶色く色づいた塊を切り分けると、断面はバラ色の見事な焼き加減です。

 肉質がきめ細かで、とってもジューシー。スモーキーな風味をまとい、熟成感のある赤ワインと素晴らしいマリアージュになりました。トスカーナではビステッカ(Tボーンステーキ)との相性がお墨付きのサンジョヴェーゼ、グリルした牛肉との相性のよさは言うまでもありません。

牛肉とワイン 炭をおこすところから、じっくり時間をかけた料理の数々を、美味しいワイン片手にいただき、木々と花々が彩る庭で、体のすみずみまで深呼吸したような昼下がりでした。ごちそうさまでした。

 持続可能な自然環境に配慮したブドウ栽培で、トスカーナの夫妻が造るワインは、美味しい空気を吸いながら楽しむ食事にぴったりの1本。皆さんも、行楽のおともにセレクトしてみてはいかがでしょうか。


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