イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.66 優美な香りとのびやかな余韻の虜に
バローロ5大産地のトップ・キュヴェ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ピエモンテ州「ロッカ・ジョヴァンニ」の「バローロ・モスコーニ 2017」をご紹介します。

バローロ・モスコーニ 2017 人間の味覚というのは、気候風土や自分の体調になかなか忠実なものだなと感じます。長い夏がようやく終わったかと思えば、急に冷え込んだ10月。気まぐれな天候に振り回されるばかりですが、今回のワイン「バローロ・モスコーニ」を味わって、「ああ、ちょうど今はこのくらいの季節にいるんだなぁ」と、身体に染み入るような感覚を覚えました。

 熟成に従ってレンガ色を帯び、紅茶や枯草、バラやスミレの深くゆたかな芳香がたちのぼる「バローロ」。イタリアのみならず世界的にも高級ワインとして名を馳せる非常に優美で余韻の長いワインは、秋の深まる季節にぴったりの味わいです。

 バローロを構成する「ネッビオーロ」は北イタリアで古くから栽培される品種で、収穫時期がほかのブドウよりも遅く、霧(ネッビア)が出始める11月頃であることが名前の由来ともいわれています。霧が立ち込めるなかブドウを摘み取るシーンはどこか幻想的で、奥行きのあるバローロの香りや味わいに似つかわしい一説です。

ブドウ畑 バローロの生産域はピエモンテ州、トリノの南側に広がります。11の生産地域があり、なかでも「5大産地」のひとつとされるモンフォルテ・ダルバ村に位置するのが、「ロッカ・ジョヴァンニ」のワイナリー。村ごとにスタイルが異なり、モンフォルテ・ダルバ村のバローロは、ボディがしっかりとして力強いタイプといわれています。

 砂の混じった石灰性粘土質の畑から摘み取ったネッビオーロを優しくプレスし、果皮を漬け込む「スキン・コンタクト」を1015日間行ったあと、フレンチバリックで36カ月、瓶内で68カ月の熟成を経て出荷。長期熟成に耐えられるポテンシャルの高いワインで、ワイナリーのトップ・キュヴェに位置付けられます。

 色調は明るく、ほんのりオレンジ色を帯びたルビーレッドで、香りは、ダークチェリーのような艶やかで甘酸っぱいフルーツのニュアンス、スパイスはシナモン、カンゾー、クローヴなど多層的、枯れ葉やヒノキの森を思わせる香りに心がスーッと癒されます。

キッチン人 口に含むと辛口でアルコールの温かみを感じ、やわらかなタンニンがじわじわと存在感を増していきます。喉を通った後に、のびやかに広がっていくベリー系の酸味、上質なダークチョコレートを思わせる苦味が印象的で、旨味が長く舌に残ります。

 お料理も深みや複雑味のあるものがよく合い、脂のしっかりとしたサーロインステーキなどでも上品にまとめてくれるワインです。今回は、手打ちパスタの生地でラビオリを作ってみました。北イタリアでは、ほうれん草とリコッタチーズのラビオリなどがよく食べられているようですが、バローロと相性のいいお肉を主役にして、ボロネーゼのソースをたっぷり包んでみました。

 薄くのばしたパスタ生地に等間隔でソースを置き、もう一枚生地を重ねてしっかりと合わせた後、ラビオリ・スタンプで抜きました。パイカッターで切る方法もあります。サッと茹で上げ、味の決め手に24カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷり添えて。

料理とワイン ニンニク、セロリ、人参、玉ねぎをじっくり炒めるところから手作りしたボロネーゼ・ソースは、合いびき肉と香味野菜の旨味がたっぷり。モチモチのラビオリ生地に閉じ込めて、パルミジャーノで熟成の旨味をプラスすると、ワインの骨格がはっきりし、果実味がくっきりと際立つ、魅力的なペアリングになりました。

 イタリア20州のうち、DOPワイン(DOCとDOCGを合わせたもの)の銘柄数が最多で、高品質ワインの生産地ピエモンテ。そのなかでも最高峰の味わいのバローロを楽しむ贅沢は、美味しい食べ物が多彩にそろい、食欲が増す秋こそぜひおすすめです。


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