イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.68 奥深きチーズの世界と楽しむ
長期熟成のヴェルメンティーノ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、サルデーニャ州の「スラウ」が手がける「シャーラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ スペリオーレ2019」をご紹介します。

シャーラ ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ スペリオーレ2019 地中海に浮かぶ島サルデーニャの北東部に広がる、州唯一のDOCG「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」。じつは白ワインのほか、スプマンテ、フリツァンテ(弱発泡性)、パッシート(陰干しブドウを使用)など、さまざまなタイプのワインが造られています。

 レアーレカンティーナで現在扱っている「スラウ」の「ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ」は3種類。すべて白ワインのタイプですが、それぞれにキャラクターの違いが楽しめるラインナップです。

 今回の「シャーラ」は、果皮を一緒に漬け込む「スキン・コンタクト」の後、澱の上で発酵させる「シュール・リー」の製法を用いて、さらに規定よりも長い熟成期間を経た「スペリオーレ」のタイプ。じっくりとブドウの持ち味を引き出す製造法で、とろりと蜂蜜色をした液体に。秋冬の食卓に温かみを添えてくれるような、存在感のある白ワインです。

ブドウ ヴェルメンティーノは、リグーリアやトスカーナなど、海岸に近い場所で栽培される品種ですが、花崗岩質の土壌をもつ産地はフランスのコルシカ島とイタリアではここだけ。 

 樹勢が強い品種なので、肥沃な土地で栽培すると果房が大きくなり収量制限をする必要が生じますが、この痩せた土壌ではブドウにストレスがかかって収穫量が自然に抑えられます。もうひとつブドウにストレスをかける要因となるのが、海から吹き込む強い風。それゆえに、エキス分が詰まったエネルギッシュなワインが生まれるのです。

風景 グラスに注ぐと、カリンやリンゴのような黄色い果実と貝殻のような海の香りが広がり、室温になじむほどに蜂蜜のような甘い香りが顔を出します。口に含むと、なめらかな果実味に満たされ、弾むような酸味はほろ苦さを伴ってライムのようなニュアンス。かすかな塩味が余韻となって旨味を強く残します。

 色や味わいに感じる蜂蜜の印象から、このワインにチーズをペアリングしてみたくなりました。イメージしていたのは、この地域で造られる羊のチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」ですが、あいにく近くのチーズ専門店に入荷がなかったので、別のものをセレクト。

 ヴェネト産の白いチーズ「グランモンテオ」は絵本に出てくるチーズのような気泡の入ったビジュアルに惹かれて。もう1種、24カ月熟成のフランス産「コンテ」は赤ワインにもよく合うチーズですが、このワインなら受け止めてくれそうです。

料理とワイン① 「グランモンテオ」はモチッとした食感が楽しめる、ミルキーでクセのないチーズで、ワインのフルーティーな味わいがすっきりと寄り添います。「コンテ」はホロホロとした食感とナッツの風味が特徴。熟成によって塩味が円みを帯び、塩キャラメルのような甘さを感じます。このチーズに合わせると、ワインのふくよかな果実味が引き立ち、さらに良いペアリングに。 

 ほかには、生ハムとドライイチジクを刻んで混ぜたマスカルポーネの簡単おつまみも作りました。「甘×辛」ミックスの味わいをクリーミーなマスカルポーネが贅沢にまとめ、ワインの酸味がさわやかに際立ちます。

料理とワイン② インカのめざめとローズマリーのフリッタータ(イタリア風オムレツ)には、すりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷり加えて。ねっとり甘いジャガイモとふわふわの卵にコクのあるチーズ、黄金色の料理がワインの色と響き合うように、熟成されたヴェルメンティーノのなめらかな力強さにマッチします。

 甘味、酸味、苦みといったデリケートなニュアンスをもつヴェルメンティーノが、長期熟成でさらに味わいを増した「シャーラ」。秋の夜長に、奥深いチーズの世界とのペアリングを探ってみるのもおすすめです。

参考文献:中川原まゆみ著『地図でわかるDOCGとDOC イタリアワイン産地ガイド』(ガイアブックス)


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