「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ロンバルディア州の「マイオリーニ」が手がける「フランチャコルタ・パドセ2019」をご紹介します。
当コラムでこれまでも数種類ご紹介している、ロンバルディア州「マイオリーニ」のフランチャコルタ。ブドウのブレンド比率や、残糖度、熟成期間などの違いが醸す豊かな表情を楽しみながら、どのワインにも通じる気品と味わいの深さに魅了されてきました。
そこへ訪れたのが、「マイオリーニ」のフランチャコルタを5種類飲み比べできるという貴重な機会。カレッタ汐留にオープンした直営店舗「ワインショップ・レアーレカンティーナ」を会場に、来日した生産者のシモーネ・マイオリーニ氏から、フランチャコルタの魅力とワイン造りにかける想いを聞くことができました。
ロンバルディア州よりシモーネ・マイオリーニ氏が来日した試飲イベントの様子
イタリアで造られるスパークリングワインは「スプマンテ」と総称されますが、その中で政府による最上位の格付け「DOCG(統制保証原産地呼称)」に認定されているのがフランチャコルタです。
シャンパーニュと同様の瓶内二次発酵を用いること、ロンバルディア州西部の指定地域で生産されること以外に、使用するブドウ品種や熟成期間にも規定が設けられ、ヘクタールあたりの収穫量は最大12トン、手摘みによる収穫が義務付けられています。
フランチャコルタ協会によると、会員の生産者は120軒あまり。手間と年月をかけて生み出されるイタリア最高峰のスプマンテは、希少価値の高さにも熱い視線が集まっているのです。
右から、シモーネ氏、息子のヤコポ氏、筆者、YouTubeチャンネル「リアルなワイン」でもおなじみ“シャチョー”の“いたさん”
生産者の日々は苦難の連続かと思いきや、シモーネ氏のお話には、いきいきとした自信と誇りがあふれていました。その軸となっているのは、この地で祖父のヴァレンティノ・マイオリーニ氏が始めたワイン造りの歴史、そして、希少な純粋石灰岩質土壌「メドーロ」とイゼオ湖ほとりのテロワールです。
今回の試飲会では、「ブリュット・サテンNV」「ブリュットNV」「ブリュット・ロゼNV」「ブリュット・ブランドノワールNV」、そして「パドセ“アリッジ・サスー”2018」の5種類を味わいました。
試飲会のテーブル。5種類のフランチャコルタを飲み比べ
スパークリングワインでは多くの場合、糖分を添加して味を調整しますが、「パドセ」は残糖3g/ℓ以下または全く糖分添加していないものに表示されます。キレの良い辛口ながら、とがったところがなく、ブドウ本来のいきいきとした甘味を感じられるのが驚きでした。異なる収穫年をブレンドせず、格別に優れた年のブドウで造られる「ヴィンテージ」タイプならでは。
今回ご紹介する1本も「パドセ」で、2019年のヴィンテージです。グラスに注ぐと、非常に勢いのある泡がシュワシュワと弾け、10分ほど経過してもグラスの底から気泡が立ちのぼっていました。鼻に近づけると、蜜リンゴと洋梨の甘く気品のある香りにワクワクと気持ちが高まります。アカシア、アーモンドの香りも。
口に含むと、シュワーッと弾けんばかりの泡がボリュームいっぱいに口中を満たし、黄色いリンゴのフレッシュな果実味、澄み切った酸が広がったあと、コクのある旨味が余韻となって舌に残ります。
溌剌としたフランチャコルタに、真鯛のソテーを合わせてみました。たっぷりの油で皮目をパリッと焼き上げ、オレガノ、マジョラム、タイムの入ったミックスハーブソルトで味付けました。弾力のある身にしっかり脂がのって、淡白な中にも深い旨味を感じる真鯛。弾けるようなワインが一瞬飛び跳ねたあと、熟成を経た奥行きのある風味がまろやかに寄り添います。
ソテーに添えたのは、リコッタチーズとほうれん草のパスタ。フライパンにバターを溶かしてリコッタを混ぜ、パスタの茹で汁と乳化させてから、茹で上げた細めのパスタとほうれん草に絡めました。適度にさっぱりとしたリコッタの繊細なくちどけとバターのコクが溶け合うお手軽パスタに、長期熟成のフランチャコルタが醸すコクのある旨味が響き合います。
ピュアなブドウの甘味をそのままに生かした、ノン・ドザージュのフランチャコルタ。長期熟成によって得られた奥深い旨味と、摘みたてを閉じ込めたかのようにフレッシュな果実味が調和する味わいは、合わせる食事を選びません。皆さんの大好きなお料理と一緒に、ぜひ楽しんでみてください。
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