イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.86 ピエモンテが誇るワインの女王
優美な芳香秘めたバルバレスコ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ピエモンテ州の「マルコ・ボンファンテ」が手がける「バルバレスコ 2019」をご紹介します。

バルバレスコ 2019  今回も新入荷のワインのご紹介です。北部ピエモンテ州から、とっておきの赤ワインが届きました。イタリア政府の格付け最高ランクのDOCGに認定される「バルバレスコ」は、「バローロ」と並ぶピエモンテの高級ワインで、ともにネッビオーロのブドウから造られています。

 「マルコ・ボンファンテ」は、ニッツァ・モンフェラートの地区で8世代にわたってワインを生産する造り手。マルコとミカエラの兄妹によって運営され、自然に寄り添った質の高いワイン造りが、国内外から高い評価を得ています。

ブドウ畑 さて、バローロが「王のワイン」と呼ばれるのに対し、バルバレスコには「女王のワイン」という形容がしばしば用いられますが、味わいにはどんな違いがあるのでしょうか。一般的には、バローロのほうが力強くパワフル、バルバレスコは芳しく柔らかな口当たりといわれています。

 バローロの北側に位置するバルバレスコの産地は、川に近く、土壌に占める砂の割合が多いことが、その一つの要因のようです。また、バローロのエリアに比べ、標高が低いこと、寒暖差が小さいことなど、さまざまな条件が影響して、同じネッビオーロ種100%のワインでも、それぞれに個性が生まれるのが興味深いところです。

 北イタリアで古くから栽培されてきたネッビオーロは、ワインにすると熟成に従ってガーネット色になり、さらなる熟成を経てレンガ色を帯びていきます。グラスの向こうが透けて見えるような薄い色合いに反して、タンニンが非常に力強いことに驚かされます。バルバレスコは最低26カ月、バローロは最低38カ月の熟成が義務付けられており、さらに5年、10年と超長期熟成にも耐えられるポテンシャルの高いワインなのです。

ワイン樽 年月とともに、香りが複雑味を帯び、味わいはタンニンを保ちながら、優美さを深めていくネッビオーロのワイン。そのロマンに魅せられるワインファンはとても多いのですが、私にとっても、思わず深いため息をつきながら味わってしまうような特別な存在です。

 ワインをグラスに注いでみましょう。ブルゴーニュ用の大ぶりのグラスを用意しました。香りが開いていくにつれ、大輪のバラを思わせる芳しい香りが漂います。グラスに吸い寄せられるように鼻を近づけると、ダークチェリー、ドライイチジク、スパイスはクローヴと黒コショウ、紅茶や枯れ葉。よく熟れたフルーツとスパイス、そして発酵のニュアンスが混ざり合い、多層的な芳香が非常に魅惑的です。

 力強いタンニンは、牛肉やジビエなど味わいの濃厚な肉類との相性が抜群。今回はラム肉の軽い煮込みを作ってみました。オーストラリア産ラム肉の肩ロースをやや厚切りにして焼き色をつけ、炒めた玉ねぎ、赤ワイン、バルサミコ酢、ローズマリーとともに30分ほど煮込みます。別にやわらかく茹でておいた、ひよこ豆を仕上げに加え、醤油を隠し味に仕上げました。付け合わせには、オーブンでグリルしたナス、ズッキーニ、赤ピーマンを。こちらはタイムとオリーブオイル、塩で味付けました。

ワインと料理 バルバレスコの華やかな香りが、ラム独特の野趣あふれる風味をきりっと洗練させ、後味を辛口に引き締めます。まとわりつくような強いタンニンは、風味も脂も濃厚なラムに負けず、絡みつくように肉の旨味を引き立て、食べ応えも飲み応えも十分。ワインの豊かな酸が、上品な後口をもたらします。

 北イタリアならではの赤ワイン品種ネッビオーロは、「透き通った重厚感」とでも呼びたくなる、内に秘めた奥深さが大きな魅力。大切に保管して、あと5年、10年と、その変化を楽しんでいただくのもおすすめです。

参考文献:『日本ソムリエ協会 教本2023』
中川原まゆみ著『イタリアワイン産地ガイド』(ガイアブックス)


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※こちらのワインは「読むワイン」で紹介されたヴィンテージとは異なります。風味や特徴に若干の違いがある可能性がございますのでご了承ください。