イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.9 北イタリアの兄弟が手がける世界中で人気の2品種ブレンド

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ピエモンテ州の「リウッツィ」が手がける「テレニスパルシ・モンフェラート・ロッソ 2014」をご紹介します。

テレニスパルシ 「春こそラム!」いつになく売り場のコピーに吸い寄せられて、ラムチョップを手に取りました。「あのワインと一緒に味わおう」と思い浮かべたのは、北イタリアのボルドーブレンドです。

 フランスのボルドー地方に代表される、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを主体にしたブレンドは、カベルネの渋みとタンニン、メルローのまるみとふくよかさ、それぞれの対照的な持ち味が融合して味わいを増す、いわば「黄金コンビ」です。それゆえ、アメリカ、ニュージーランド、チリほか世界各地で、このスタイルのワインの銘醸地が生まれてきました。

葡萄畑 イタリアで、カベルネやメルローなどフランス系品種のワインといえば、「スーパータスカン」が一躍有名になったトスカーナ州を連想します。ピエモンテ州では、ネッビオーロ、バルベーラなど土着ブドウの単一品種ワインが多いので、カベルネとメルローを半分ずつブレンドする「テレニスパルシ」は、ちょっと意外な印象です。

 しかし、ひとたび味わってみると、「リウッツィ」を運営するステファノとシモーネの兄弟の、このブレンドへの自信がしっかりと伝わってきます。

ラベル貼り かなり色の濃い、落ち着いたダークチェリーレッドの色調で、グラスの底には澱が沈んで見えます。香りは複雑で、ベリーのジャムのようなフルーツを煮詰めたニュアンス、クローブやナツメグのスパイス、バニラ、スギや干し肉のような熟成香など、さまざまに感じます。口に含むと、アタックはソフトでまるみがあり果実味たっぷり、しだいに旨みを伴なった苦みや渋みがジワジワと広がって、後味に穏やかな酸が綺麗に抜けていきます。

樽イメージ 果皮を漬け込む「スキン・コンタクト」による醸し、発酵中に棒でかき混ぜる「パンチングダウン」など伝統的な製法を用いて、ブドウの香りと旨みを抽出し、18カ月の木樽熟成を経た、芳醇な味わいをしっかりと感じます。

 塩とローズマリーを振ってグリルしたラムと一緒にいただきました。私にとってラムは、羊肉独特の香りと仔羊ならではのやわらかな肉質と甘さが、まるでカベルネ&メルローのように、力強さと優しさが共存する魅惑の食材です。「テレニスパルシ」と合わせてみたかった理由はそこにありました。タンニンと熟成感による飲みごたえ、包み込まれるようにソフトな果実味が、期待したとおり抜群の相性でした。

料理とワイン じつは「春こそラム」に惹かれた理由が、もうひとつありました。30年近く北海道で生まれ育った私にとって、桜の下でジンギスカンを囲むのが春の風物詩だったのです。北海道の桜の開花期は大型連休ごろなので、春の出会いから少し時間がたった頃合いに、人との距離をぐんと縮めてくれる賑やかなイベントでした。陽気な想い出ばかりですが、煙と羊の匂いが染み込んだ洋服で帰りの電車に乗り込む瞬間だけは、いつもためらいました。

 おうちでワインとラムを楽しむなら、そんな心配はご無用です。とはいえ、ここ数年は賑やかな春が心から恋しいですが、まずは穏やかな春の訪れを願うばかりです。


「リウッツィ」の「テレニスパルシ・モンフェラート・ロッソ」の詳しいご紹介はこちら

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※こちらのワインは「読むワイン」で紹介されたヴィンテージとは異なります。風味や特徴に若干の違いがある可能性がございますのでご了承ください。