イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.16 花と蜜の香りに魅せられる
スロヴェニア国境の白ワイン

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の「ヴィーニャ・トラヴェルソ」が手がける「リボッラ・ジャッラFCO 2017」をご紹介します。

リボッラ・ジャッラFCO 2017 イタリアの北東部、オーストリア、スロヴェニアと国境を接する地域に、イタリアを代表する白ワインの名産地があるのをご存じですか?

 それが、今回ご紹介する「トラヴェルソ」のあるフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州です。州のワイン生産量に占める白ワインの割合は76%(2020年のデータより)、1970年頃から「地域固有のブドウを用いたクリーンでフレッシュな白ワイン」というスタイルを確立し、世界的な白ワイン「ソアヴェ」を生むヴェネト州の隣にあって、こちらも目が離せない銘醸地なのです。

ブドウ畑 リボッラ・ジャッラは、フリウリ地方に1300年頃から植えられていたとされる白ブドウで、フリウラーノと並んで州を代表する固有品種です。数年前のお正月、近所のワインショップで「和食に合うワイン」を相談したところ、紹介されたのがリボッラ・ジャッラのワインで、以来、イタリア白ワインのなかでも大好きなもののひとつになりました。

 まず香りが素晴らしいです。リンゴのような香りにハーブのニュアンスが入り混じったカモミールの花のような芳香、花の蜜やマルメロ、洋梨など、アロマティックで広がりがあり、「さあ、ワインの味わいは?」とわくわくしてしまいます。口に含んだときのアタックは優しく爽やか、キリっとした酸を感じ、蜜リンゴのような甘酸っぱさ、柑橘のようなほろ苦さ、そしてミネラル感、と多層的に広がっていき、みずみずしく弾むような味わいです。

ワイナリーのジャンカルロ氏 この素晴らしい白ワインが生まれるのは、フリウリ地方の土壌にも関係しており、石灰性粘土と砂質石灰岩が交互に層を成す「ポンカ」と呼ばれる特徴的な土壌が、ブドウにいきいきとした活力を与えています。もともとヴェネト州でワイナリーを営んでいたジャンカルロ氏は、フリウリの風土に魅せられ、この地域で上級ワインを造ってみたいと、とりわけ高級白ワインの産地とされるコッリ・オリエンターリ地区にあるスロヴェニア国境の街・プレポットに「ヴィーニャ・トラヴェルソ」を立ち上げました。現在は、長男のステファノ氏がエノロゴ兼オーナーを務めています。なお、ジャンカルロ氏の妻が手がけるヴェネト州のワイナリー「オルネッラ・モロン」も「レアーレカンティーナ」でご紹介しています。

ステファノ氏 溌溂とした味わいのリボッラ・ジャッラに、天ぷらを合わせてみました。天ぷらやフリットなどの揚げ物に合わせやすいワインとして、フランス・アルザス地方やドイツが名産のリースリングの辛口タイプが挙げられるかと思います。リボッラ・ジャッラは、柑橘やリンゴ、蜜、白い花、そしてミネラリィなニュアンスがリースリングと似た特徴があるように思い、ペアリングしてみました。

料理とワイン カラリと揚がったエビの天ぷら、中はプリっとして密度の高い肉厚な旨みがあり、ワインにもボリュームがあるので負けず、キレのいい酸が清涼感を添えてくれます。みずみずしい甘さを閉じ込めたズッキーニの天ぷらは、後味のかすかなほろ苦さが、青草のようにフレッシュなワインの風味にとけ合うようです。天つゆよりも塩でいただくのがおすすめです。

 ほかにも、小アジの南蛮漬けやホタテの香草焼きなど、味わいにアクセントのある魚介料理に寄り添ってくれることと思います。ふだんの食卓に華を添えてくれるブーケのような香りと味わいを、ぜひ楽しんでみてください。


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