イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.17 100年以上も根付く国際品種の
エレガントなアッサンブラージュ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ヴェネト州の「オルネッラ・モロン」が手がける「ヴィテ・ロッサ」をご紹介します。

ヴィテ・ロッサ こちらのワインのセパージュは、メルローが50%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%、カベルネ・フラン20%です。ワインに詳しい皆さんなら、「ボルドー・ブレンド」とカテゴライズするのではないでしょうか?

 その通りなのですが、じつはヴェネト州東部には、19世紀に国際品種がフランスから持ち込まれ、以来、地元のブドウとして100年以上も根付いてきた歴史があるのです。この地で女性オーナーが営む「オルネッラ・モロン」は、イタリア在来品種のほか、このような国際品種を使った上質なワインを手がけています。ワイナリーの起源はヴェネツィアの名門貴族ジュスティニアン家が1652年に建設した「ヴィッラ・ジュスティニアン」にさかのぼり、大切に保存されてきた建物を宿泊施設として再生するなど、地域のワイン造りの歴史に寄り添ってきました。

ヴィラ イタリア政府がワインの原産地を保護するためにつくったワイン法では、格付け上級ワイン「DOC」「DOCG」が地域ごとに定められています。ヴェネト州東部では「DOC」「DOCG」に、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの使用が認められている地域があることからも、国際品種が地元のブドウとして受け入れられ、地域特有のワインを生み出してきたことがうかがえます。

 これに対し、ヴェネト州西部にはヴァルポリチェッラ、バルドリーノ、ソアヴェなど、地場ブドウのワインで有名な地域が多く、その対比が面白いですね。

イメージ さて、今回ご紹介する「ヴィテ・ロッサ」は、じっくり付き合いたいワインです。色調は深みのあるダークチェリーレッドで、グラスに注ぐとブラックチェリーやプルーンなど、黒系果実のよく熟れた温かみのある香りが立ちのぼります。空気を含んでしだいに香りが開いていき、クローヴなどスパイス、バラの花びら、干し草、ビーフジャーキー、カベルネらしいピーマンなどニュアンスに富んで複雑、華やかでもあり、しっとりとした印象でもあります。

オルネッラ・モロン氏 ワインには樹齢35年の樹から収穫したブドウが使われます。樹齢が高くなるとブドウの実は小さくなり、味わいがギュッと凝縮し、奥行きのあるワインに。バリック(小樽)で1215カ月熟成したのち、さらに瓶内熟成され、深いブーケが醸成されるのです。

 口に含むと、果実の甘味が広がり、タンニンはしっかりとして、ビターチョコレートのような苦みを感じます。パワフルな果実味とタンニンをしなやかな酸が支え、非常にエレガント、長い余韻に包まれ、幸福感に満たされるような味わいです。

料理とワイン 今回はポークソテーを合わせてみました。トンカツ用の厚切りロース肉を脂身までカリッと焼き上げ、ソテーしたアスパラガスと蕪、素揚げしたジャガイモを添えました。お肉は塩・コショウで下味をつけてから焼き、仕上げにソース代わりにブルーチーズをのせてみると、ワインの複雑味、熟成感に寄り添い、手軽な豚肉でも濃厚な赤ワインにしっくりとなじみます。

 まるみがあり豊満なメルローと、タンニンと酸のしっかりとしたカベルネ・ソーヴィニヨン、エレガントな風味を醸すカベルネ・フラン、3つのブドウの持ち味が響き合うアッサンブラージュの赤ワイン。空気を含んでさまざまな風味が現れるので、数日かけて味わいの変化をゆっくり楽しんでみるのもおすすめです。


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