「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「アマンティス」が手がける「ビルバネッラ2016」をご紹介します。
「サンジョヴェーゼ」は「酸」。はじめから駄洒落のようですが、酸とタンニンのしっかりしたブドウ品種で、口の中が“シュッと乾く”ようなドライな後口が印象的です。この辛口の風味をイタリアで「アシュット(Asciutto)」と呼ぶことを、ワインスクールの先生から楽しく教わりました。
そのおかげで、「アシュット感」をキーワードに、サンジョヴェーゼが判別しやすくなりました。もちろん日常の食卓では、テイスティングの訓練は忘れて、気楽に楽しんでいます。
このドライ感は、ワイン単体で味わうと少し強めの印象ですが、食事と合わせてみると、驚くほど真価をあらわします。そう、サンジョヴェーゼは食事を引き立てる、フードフレンドリーなブドウ品種なのです。
イタリアの黒ブドウ(赤ワイン用のブドウ)のうち、もっとも栽培量の多いのが、サンジョヴェーゼです。ほとんどの州で植えられていますが、その「聖地」ともいえるのがトスカーナ州。とりわけ粘土質や石灰質土壌を好み、トスカーナ中央部の「キアンティ・クラシコ」とその周囲に広がる「キアンティ」が世界的な銘醸地として知られています。
一方で、サンジョヴェーゼのワインの「南トスカーナの銘醸地」として注目を集めているのが、モンテクッコのエリアです。今回ご紹介する「ビルバネッラ」はDOC(統制原産地呼称)「モンテクッコ」に分類され、DOC「モンテクッコ・サンジョヴェーゼ」と並んで2011年と比較的新しく認定された産地です。東にアミアータ山、西に地中海を抱いて土壌は表情に富み、やわらかでしっとりとした赤ワインを生み出しています。
アマンティスのワイナリーは、モンテクッコ東部、モンテネッロの丘の上にあります。なだらかな傾斜地に広がるブドウ畑は粘土質土壌をもち、ブドウのエキス分がしっかりと形成されるのが特徴です。サンジョヴェーゼにカナイオーロをブレンドし、オーク樽で12カ月熟成されています。
グラスに注いでみると、明るいルビーレッドの色調で、グラスの壁をつたって落ちる跡がはっきりと残り、完熟度の高いことがわかります。香りは、甘酸っぱい木の実と、クローヴやベイリーフのような香辛料が、互いの個性を心地よく引き立て合う印象です。
味わうと、酸は熟成によってなめされたようにやわらかく、凝縮した果実味とタンニン、苦みがとけ込み、厚みがあってビロードのように深い飲み心地です。かすかに塩味を感じ、とても長い余韻があります。
先日、ご近所さんが分けてくれたフレッシュバジルをペーストにしてありました。クルミ、パルミジャーノ、ニンニクの風味が効いた味わいが、このワインに合いそうなので、自家製サルシッチャ(ソーセージ)の香辛料として生かしてみました。調味料とともに豚ひき肉に混ぜ、ラップに包んだものをさらにアルミホイルで包み、湯を張ったフライパンで蒸し焼きにします。
表面をこんがりと焼き上げ、里芋にゴルゴンゾーラをのせてグリルしたものを付け合わせに。豚肉の脂にサンジョヴェーゼの酸味がぴったりの相性。バジルやパルミジャーノなど詰め込んだイタリア食材に、サンジョヴェーゼのなめらかで風味に富んだ味わいが、きれいに寄り添ってくれました。
ちょっと目を引くエチケットの黒猫は、トスカーナ地方で「幸運のシンボル」とされ、「飲む人に幸せをもたらすように」との思いが込められているそうです。スパイスやチーズを効かせた複雑味のあるお料理も、表情豊かなサンジョヴェーゼがしっかりと受け止めます。トスカーナが誇る赤ワインを、皆さんの大好きなお料理に合わせて、“幸せな食卓”を楽しんでくださいね。
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