イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.38 古代の趣残る美しい島が生む
土着ブドウの魅惑的な赤ワイン

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、サルデーニャ州の「スラウ」が手がける「ナラク・カンノナウ・ディ・サルデーニャ2021」をご紹介します。

ナラク・カンノナウ・ディ・サルデーニャ2021 サルデーニャ島の全土で栽培される、果実味豊かでスパイスの風味を持つ「カンノナウ」。このブドウを85%以上使い、指定地域で醸造された赤ワインがDOC(統制原産地呼称)「カンノナウ・ディ・サルデーニャ」です。

 カンノナウはフランスではグルナッシュと呼ばれています。長期熟成にも耐えられ、余韻の長いワインを生みますが、今回ご紹介するのはステンレスタンクで熟成させたフレッシュなタイプ。ジューシーな果実味が素直に楽しめ、お正月にご馳走を食べ過ぎたという方にも嬉しい、軽やかな飲み心地です。

ワイナリー内部 サルデーニャ島は、地中海に浮かぶ島のなかでシチリアに次いで大きな島で、ヨーロッパ屈指の高級リゾート地としても知られています。モダンな外観に近代的な設備を備えた「スラウ」のワイナリーは州北東部、“エメラルド海岸”を意味するコスタ・スメラルダの広がるアルツァケーナの街で2009年にスタートしました。ワイン名に冠された「ナラク」とは、地中海の古代文明が築いた要塞のことで、いまでも島のあちこちに見受けられるそうです。

海岸 エメラルド色の海岸が広がるリゾート地・サルデーニャの歴史は複雑で、古くからローマ、ビザンチンなど様々な権力の支配下に置かれてきました。そのため地元の人たちは美しい海岸部に住まず、内陸部で羊を飼って暮らしを営み、独自の文化が築かれていきたといわれています。

 その歴史には光と影を感じますが、海に囲まれ、羊の文化があると聞いて妙に親近感を抱いたのは、私の生まれ育った北海道との共通点を感じるせいです。お料理にはラムチョップを合わせることにしました。

 ワインのテイスティングから始めましょう。色調は明るく、紫がかったルビーレッドで、香りにはダークチェリー、ラズベリー、シナモンやクローヴといったスパイス、全体的に甘く香ばしいニュアンスがあります。

 口に含むと、しっかりと舌にまとわりつくようなタンニンを感じ、やや塩味を伴なった旨みが広がり、フルーティーな酸味が軽やかに抜けていきます。

ブドウ畑 カンノナウの風味をフレッシュに閉じ込めた若々しいワインには、くさみがなくやわらかな仔羊がぴったりです。オリーブオイルと塩、ローズマリーでシンプルにソテーし、香ばしく焼きあがった表面をかみしめると、肉汁と脂の旨みがジュワっと口に広がります。ワインのベリー系の果実味が、ラムにソースのような優しい甘さを添え、しっかりと感じる酸とタンニンが後味を引き締めます。

 付け合わせには、白いんげん豆と香味野菜のスパイス煮込みを。お正月明けに、なぜだか食べたくなるカレーをイメージして、クミンで風味付けしてみました。缶詰や紙パックなど手軽に様々な種類の豆が手に入りますが、乾燥豆を水から茹でると、豆そのものの味わいと好みの固さを楽しめるので気に入っています。ストックしていた豆と仔羊で作った一皿に、スパイシーな赤ワインを合わせてみると、なんだか山小屋にこもって食事をしているような気分です。

料理とワイン はるか遠くまで見渡せる海岸沿いに住むことがかなわず、山の暮らしを守った人々。古くから地域に残るブドウを生かし、他国の支配のもとで発展したワイン造り。サルデーニャ独自の歴史に想いを馳せると、カンノナウの甘い香りと複雑な味わいとのコントラストに、いっそう不思議な魅力を感じます。


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