イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.56 スパイシーな肉料理に寄り添う
ミディアムボディのカベルネ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ヴェネト州の「オルネッラ・モロン」が手がける「オンブレ・ディ・ピエトラ カベルネ 2019」をご紹介します。

オンブレ・ディ・ピエトラ カベルネ 2020 当コラムでもいくつかご紹介している「オンブレ・ディ・ピエトラ」のシリーズは、スタイリッシュなデザインと2000円台前半の手頃な価格で、ちょっとした持ち寄りの食事会や手土産にも重宝するワインです。国際品種のブドウが中心で、今回のワインはカベルネ・ソーヴィニヨン100%で造られています。

 地場品種のイメージが強いイタリアワインにおいて、ヴェネト州では、ガルガネーガで造られる「ソアヴェ」、コルヴィーナの「ヴァルポリチェッラ」をはじめ、地元品種の伝統的なワインが愛されています。その一方で、州東部には19世紀に国際品種がフランスから持ち込まれ、以来、地元のブドウとして100年以上も根付いてきたという歴史があります。

 ヴェネツィア県とトレヴィーゾ県の間に位置する「オルネッラ・モロン」のワイナリーは、ピアーヴェ川からの沖積平野にあり、土壌は鉄分を豊富に含む石灰質。アルプスからの風とアドリア海からの風が出会う、温暖な地中海性気候に恵まれています。そんな好適地だけあって、17世紀に貴族が始めた農園に起源をもち、現在は女性オーナーと3人の息子によって引き継がれているワイナリーです。

ワイナリー ワインをグラスに注いでみると、明るいルビーレッドの色調で、若々しさを感じます。香りは、カシスやアメリカンチェリー、ヴァニラ、クローヴなど、フルーツとスパイスのニュアンスです。口当たりはソフトでまろやかで、ジューシーな果実味が優しく口中を満たし、カベルネらしいタンニンと苦みが穏やかに、旨味を伴って後に続きます。

 イタリア地方料理の本を眺めていると、北東部ではオーストリア・ハンガリー帝国に支配されていた歴史的背景から、東欧に影響を受けた料理が親しまれていることがわかりました。そのひとつとして紹介されていた、ハンガリーの煮込み料理「グーラッシュ」は、とりわけヴェネト州のお隣のフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州に根付いているそうですが、今回のワインと相性が良さそうなので作ってみることにしました。

 以前、ハンガリー在住経験のある方に振舞っていただき、ワインとともに美味しく楽しんだことがあります。シチューのような外見だったと記憶していますが、今回のレシピはたっぷりの人参とともに煮込んだ素朴なスタイルです。

鍋の人参 400グラムの牛モモ肉に対して、なんと人参を3本も使います。千切りにした人参に、みじん切りのニンニク、オレガノ、マジョラムなどのスパイスを混ぜておき、たまねぎと牛肉が色付いたころに炒め合わせます。じわじわと汗をかくように、人参から水分が出てきて、それが旨味になっていくのがわかります。

 味わいの決め手、パプリカパウダーと少量のトマトピューレを加えて、牛肉がやわらかくなるまで、1時間以上コトコト煮込みます……が、夏場は暑いので、節電も兼ねて手製の保温カバーで調理時間を短縮しました。

料理とワイン 出来上がった料理を味わってみると、パプリカのスパイシーな風味と肉の旨味をまとった人参が味わいの中心で、人参そのものの甘さとあいまって、非常にまろやかに仕上がっています。優しい飲み口のミディアムボディのカベルネが、同じトーンで寄り添い、脂身の少ない牛肉の濃密な旨味を程よいタンニンが引き締めます。クミンと塩を混ぜて2日ほど置いたキャベツのマリネが箸休めです。 

 暑い季節には、スパイスを効かせた料理が、不思議と元気をもたらしてくれますね。さまざまな国の支配下に置かれ、影響を受けながら、地域ごとに個性ゆたかな食文化が育まれてきたイタリア。その背景に思いを馳せながら、ワインのある食卓を楽しんでみるのもおすすめです。


オルネッラ・モロンの「オンブレ・ディ・ピエトラ カベルネ 2019こちら

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