イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.62 海岸線と丘陵地帯が織りなす
トスカーナの“海のワイン”

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、トスカーナ州の「ヴァル・ディ・トロ」が手がける「アウラマリス2021」をご紹介します。

アウラマリス2021 今年の夏は暑くて、「早く秋にならないかな」とばかり思っていたのに、旅先で海岸へ出かけたら、日に焼けることも忘れて、貝殻拾いに夢中になってしまいました。

 自然が生んだ造形に惚れ惚れしながら、毎年少しずつ集めた貝殻が、ちょっとしたコレクションになっています。そんな貝殻たちと一緒に撮影したくなるくらい、このワインには、磯の香りがたっぷりと詰まっていました。

 地中海に沿って南北に続く海岸線と、州面積の65%以上を占める丘陵地帯が、絵画のように美しいトスカーナ州。海岸部は温暖で雨の少ない地中海性気候、内陸部は夏と冬の寒暖差の激しい大陸性気候、と気候が異なり、今回ご紹介する「ヴァル・ディ・トロ」は、海岸部のマレンマに位置しています。

ワイナリー 「アウラマリス」の主体である「ヴェルメンティーノ」は、海の近くの風通しの良い場所を好む品種で、地中海からの風が吹き、水はけの良い火山性石灰質土壌をもつこの土地に、まさにぴったりのブドウです。

 ワイナリーのこだわりは、国際品種を使わず、マレンマの風土に合ったイタリアの土着品種を使用すること。サンジョヴェーゼ、モンテプルチャーノ、ヴェルメンティーノ、グレケットのみにこだわって、白、ロゼ、赤の表情豊かなワインを発信しています。

 「アウラマリス」の外観は、明るいレモンイエローで、グラスをつたう液体はさらさらとしています。グレープフルーツやライムといった柑橘類に、パイナップルのような甘い香りがほのかに入り混じり、レモングラス、白コショウ、そして貝殻の香りが。

ブドウ畑 口に含むと、いきいきとした酸味とミネラル感、旨味を伴った苦味が融合し、のど越しに塩味を感じます。爽快でドライな飲み口ですが、しっかりとした旨味をもったエネルギッシュなワインです。

 海の幸をたっぷり使った、漁師風のパスタを作ってみました。にんにくと赤唐辛子をオリーブオイルで炒め、イカ、種を除いて角切りしたトマト、あらかじめブイヨンを取り分けておいたアサリのむき身を入れて、茹で上がったパスタを手早く絡めます。パスタはスパゲティよりやや細いフェデリーニを使いました。

料理とワイン ツルリとした食感に濃厚な旨味の詰まったイカ、アサリのブイヨンをしっかり吸ったパスタを、硬質なミネラル感が下支えするワインがどっしりと受け止めます。にんにくの香ばしさと唐辛子のピリ辛風味がシンプルなパスタのアクセントに。ピリピリと後を引く香味と、ワインのゆたかな酸味がシーソーのように引っ張り合って、愉しいペアリングになりました。

 いくつもの夏の想い出が詰まった貝殻たちを眺めていると、キラキラした場面ばかりが思い出されて、夏ってやっぱり素敵な季節だな、と思ったりして。残暑が落ち着くころになって、そんな風に思う、毎年その繰り返しかもしれません。

 夏の余韻を楽しむのにぴったりの1本。ぜひ初秋の空気の中で、楽しんでみてください。


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