イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.63 深紅のバラを思わせる優美さ
陰干しブドウの特別なワイン

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、ヴェネト州「デリボリ」の「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ 2014」をご紹介します。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ 2014 秋冬にじっくり楽しみたい、とっておきのワインが届きました。「アマローネ」のなめらかな響きを味わうように発音したくなるのは、特別に手間をかけられたワインに抱く、憧れや畏敬の念ゆえかもしれません。

 「アマローネ」すなわち「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」が特別なのは、「アパッシメント(陰干し)」したブドウで造られるという点です。こちらのワインの場合は、手摘みしたブドウを80日から100日かけて乾燥させ、エキス分を濃縮してから発酵。その後、オーク樽で24カ月以上の熟成が義務付けられています。

樽イメージ リッチでアルコール度数が高いワインとして、世界じゅうにファンがいる「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」。ヴェネト州のDOCGに認定され、DOC「ヴァルポリチェッラ」と同様にブドウ品種はコルヴィーナ・ヴェロネーゼ、ロンディネッラを主体に構成されています。「ヴァルポリチェッラ」はアーモンドを思わせる香りとほろ苦い味わいが特徴のワインで、「アマローネ」になると、よりなめらかでエレガントな風味に。

 グラスに注ぐと、やや黒みを帯びたガーネットの色調に、10年近い年月を経た落ち着きを感じます。レッドカラントやダークチェリー、深紅のバラといった果実や花の香りに、シナモンスティック、クローブなどのスパイスが際立ち、木の皮やダークチョコレートのような香りも。スパイスを加えてコンポートしたプルーンやイチジクのような、濃密な香りにうっとりと引き込まれてしまいそう。

ブドウ畑 口に含むと、非常にあたたかみのあるアタックで、果実味とほろ苦さが口中を満たし、さらにジワジワと温度を上げていくような飲み心地です。喉ごしは辛口で、アルコール度の強さを感じます。ひとつひとつのニュアンスは濃厚ですが、力強いというより密度の高い印象。舌の上でひとつにまとまり、まろやかな余韻を心地よく感じるワインです。

 これからの季節に味わいたくなる、お肉の煮込み料理には抜群の相性。今回は王道のビーフシチューを作りました。いつもより手間をかけて、玉ねぎ、セロリ、にんじん、ブーケガルニを丸ごと1本分の赤ワインと少量のトマト缶で煮込み、圧力鍋でやわらかくした牛すね肉を煮汁ごと加えてさらに煮込みました。ブイヨンを取った野菜はこして取り除く、ちょっと贅沢な作り方です。

料理とワイン こっくりと艶やかなブラウンのビーフシチューが完成。ホロリとくずれる牛すね肉、野菜の旨味が溶け込んだシチューを熱々でいただきます。香ばしい味わいに、ワインの独特のほろ苦さが寄り添い、ともするとワインの風味をかき消してしまいがちな濃厚なシチューの味わいも、「アマローネ」ならではの凝縮感が優雅に受け止めてくれます。ワインの中から膨らむような酸味のおかげで、重たくならず、上品な後味に。

 家庭料理の中では、どっしりと重厚な印象のあるビーフシチュー。合わせるワインに悩んだら、「アマローネ」を手に取って、陰干しでブドウの風味を引き出したイタリア伝統製法の底力を、ぜひ味わってみてください。


「デリボリ」の「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ 2014」こちら

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