イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.76 スパイス料理を優しく包み込む
なめらかな口当たりのメルロー

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の「ヴィーニャ・トラヴェルソ」が手がける「メルロー FCO 2019」をご紹介します。

メルロー FCO 2019 暦の上では春ですが、依然として寒さは厳しく、熱々の食事と赤ワインが恋しい日々ですね。寒い時期にぴったりの、温かみを感じるメルローを、フリウリからご紹介します。

 スロベニアと国境を接する、北イタリアのフリウリ。ワイン生産量のじつに85%を白ワインが占め、フリウラーノやリボッラ・ジャッラなどの土着品種が人気を集めてきました。いっぽうで、近年は赤ワインにも注目が集まっています。レフォレスコやスキオッペッティーノといった地場品種のほか、カベルネやメルローなどが地元に根付いており、DOC赤ワインの多くにも、これらの品種の使用が認められています。

ブドウ畑 「ヴィーニャ・トラヴェルソ」のワイナリーが佇んでいるのは、フリウリの銘醸地コッリ・オリエンターリ地区のプレポットの丘の上。石灰性粘土と砂質石灰岩が交互に層を成す土壌「ポンカ」と、周囲を囲む手つかずの森が強い風から樹々を守る好条件に恵まれた土地で、念願叶ってブドウ栽培を始めました。白ワインとともに力を注ぐ赤ワイン・メルローがどんな味わいをもたらすのか、とっても楽しみです。

 ワインの色は紫がかった深いルビー色で、グラスの壁にしっかりと跡がつくほど粘性が強く、濃密さを感じさせる外観です。香りには、よく熟れたプラム、サンザシ、木の皮、アーモンド、クローブ、黒胡椒などを感じ、チョコレートのニュアンスも印象的。オーク小樽を用いて11カ月の熟成を経た、豊かなアロマにうっとりと引き込まれます。

木樽 口当たりは非常にソフトで、豊かな甘味は完熟した黒系フルーツとともにカラメルや黒蜜などを連想させます。ですが、決して甘すぎるというわけではなく、中盤からは、なめらかなタンニンとほろ苦い風味、穏やかな酸が膨らんでいき、複雑な風味が食事に合わせやすいワインです。

 牛肉の赤ワイン煮込みやステーキには文句なしの相性でしょう。今回はちょっと冒険して、カレーを合わせてみることにしました。ワインの持つスパイスの風味、熟れた果実味、チョコレートの香りが、カレーと共通する要素だと感じたからです。

 雑誌をぱらぱらめくっていたら、塩漬けにした豚肉で作るインドカレーを見つけました。参考にしつつ、我が家にある材料でアレンジして作っていきます。

  ボウルに、塩漬け豚、ヨーグルト、トマトソース、すりおろしたニンニク、生姜、バルサミコ、カレー粉やナツメグ、シナモンなどのスパイス類を混ぜておきます。フライパンにオイルを熱してクミン、フェンネル、黒胡椒の香りを立てたあと、玉ねぎを炒め、合わせておいた材料を加えて20分ほど煮込めば出来上がりです。

料理とワイン 塩漬け豚がいい仕事をしてくれたのか、ササッと作ったわりに、時間をかけて煮込んだような深みのある味わいに仕上がりました。スパイスの風味が溶け込んだカレーを、ワインの豊かな果実味が包み込むような優しいマリアージュです。タンニンが主張しすぎないのも、カレーと穏やかに調和する条件だということもわかりました。

 これまでカレーのときは、ちょっと甘味のある白ワインを合わせたり、はたまたビールをいただいたりしていましたが、イタリアらしい複雑味のあるメルローは、スパイシーなカレーをも支える包容力を持つという嬉しい発見に。皆さんも、枠にとらわれずに楽しんでみてください。

 まもなくやってくるバレンタインデーの贈り物に選んで、香りの中にチョコレートを見つけてもらうのも、粋なアイディアかもしれませんね。

※本文中のデータは『日本ソムリエ協会 教本2023』を参照しました。


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