イタリアワインの魅力をお伝えします読むワイン

Vol.78 イタリアからゲストを招き
サンジョヴェーゼ飲み比べ

 「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、214日に直営店舗「レアーレカンティーナ汐留横丁店」で開催された、「サンジョヴェーゼ飲み比べイベント」の様子をリポートします。

ワイン 昨年オープンした初の実店舗「レアーレカンティーナ汐留横丁店」では、ワイン販売と有料試飲のほか、生産者やワイン関係者を招いてのスペシャルイベントが随時開催され、イタリアワインの魅力を発信する場としても人気を集めています。

 さて、今回のゲストは、トスカーナを拠点にイタリアワインの輸出担当マネージャーを務めるアンドレア・ビアジーニ氏。25年ほど前からワインの仕事に携わり、「素晴らしいワインを造る小規模ワイナリーを世界に広めたい」との思いで、2007年に独立しました。

アンドレア氏 「レアーレカンティーナ」でアンドレア氏が携わる2つのワイナリー「アマンティス」と「カロッビオ」が手がける「サンジョヴェーゼのワイン」にスポットを当て、5種類を飲み比べながら、その魅力をたっぷり語っていただきました。

 最初に飲み比べたのは、アマンティスの「アマンティス2018」と「アマンティス・リゼルヴァ2016」。

グラス写真①右から、「アマンティス2018」と「アマンティス・リゼルヴァ2016

 「アマンティス2018」は、明るいルビー色で、スミレやレッドカラント、アーモンドの入り混じった心地よい香りが鼻をくすぐります。口に含むと、綺麗な酸味とデリケートに溶け込んだタンニンが非常にエレガントです。「ブドウの生育がよく、とてもフルーティーでスパイシー。タンニンも程よく、バランスに優れた年」とアンドレア氏。

 フレンチオーク樽による熟成20カ月の「アマンティス」に対し、「リゼルヴァ」は24カ月と熟成期間が長く、また、良年にしか造られないワインです。アンドレア氏いわく、「2016年は春と夏の寒暖差が大きく、非常に良いヴィンテージ。タンニンのしっかりしたブドウが育ち、複雑で凝縮感のある素晴らしいワインになった」。スミレやベリーのほか、ビーフジャーキーのような旨味を感じる芳香にそそられて口に運ぶと、酸が高く保たれたまま熟成によるなめらかさを醸した、リッチな味わいを堪能できました。

会場風景アンドレア氏の解説を通訳付きで聞きながら、5種類のサンジョヴェーゼのワインを飲み比べる参加者たち

 アマンティスの特徴は、高密植のブドウ栽培にあるといいます。通常は1ヘクタール当たり4000から5000本程度の樹を植えるところ、8000から最大2万本程度を植えることで果樹同士の競争を促し、果実味の凝縮したアロマ豊かなブドウが生まれるそうです。

 2つのワインは、イタリア政府の格付け最上級の「DOCG」に認定され、呼称は「モンテクッコ・サンジョヴェーゼ」。のちほど紹介する「DOCGキャンティ・クラシコ」よりも南に位置し、DOCからDOCGへの昇格は2011年、この新しいエリア「モンテクッコ」にアンドレア氏は大きな可能性を感じているそうです。「アマンティスはサンジョヴェーゼに魅せられ、栽培に最適な場所を2年がかりで探していた。そして見つけたのが、渓谷とアミアータ火山がもたらす気候条件と土壌に恵まれた、このモンテクッコだったんだ」。

 続いてカロッビオのワインを試飲。こちらのワイナリーの強みは、なんといってもコンカ・ドーロ(黄金の谷)と呼ばれる銘醸地に位置していること。海抜300450mの南西向きの畑で、昼夜の寒暖差が激しく、十分な日照量があり、水はけと保水力に優れた特殊な土壌に恵まれています。15世紀に設立された農園に起源をもつワイナリーで、オーナーのダリオがワイン造りに注ぐ情熱に魅せられた、とアンドレア氏は語ります。

グラス写真②右から、「キャンティ・クラシコ2016」、「同2017」、「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ2015

 まずは、ヴィンテージ違いの「キャンティ・クラシコ」を飲み比べ。2016年は非常に暑い年で、ブドウ収穫のタイミングを見極めるのが難しかったぶん、「収穫量が落ちても、高品質にこだわって選別された」とのこと。やわらかなベリーの香り、フレッシュでフルーティーな素直な味わいに、程よいタンニンが溶け込んでいます。

 いっぽう、2017年は雨量と日照量の両方に恵まれた年。ブーケガルニのような複雑な香りが食欲をそそり、ほのかに感じるだしのような風味が、酸やタンニンと調和しながらエレガントな味わいを生みます。

 最後に試飲したのは、「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ2015」。深いルビー色の液体は、とろりとした粘性に凝縮感を感じます。アーモンドの香ばしい香りがふわりと漂い、口当たりは濃密、のど越しは辛口で酸味が華やかに開き、後味にオークの香ばしさがじんわり広がり、長い余韻がいつまでも続くようです。

アンドレア氏と筆者トスカーナ氏の中心部、シエナ県サン・ジミニャーノ生まれのアンドレア氏と筆者

 イタリアで栽培面積ナンバーワンを誇るサンジョヴェーゼ。エリアやヴィンテージ、醸造方法などの違いにより、ワインに生まれるキャラクターの違いをはっきりと感じることができました。新鋭の「モンテクッコ」と長い歴史をもつ「キャンティ・クラシコ」、それぞれの生産者が情熱を傾けるワインを、トスカーナから遠く離れた東京で味わうひととき。その橋渡しをしてくれたアンドレア氏の確かな眼とパッションに敬意を抱きつつ、会場に充満する赤ワインの香りと笑い声に酔いしれた宵でした。


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