「レアーレカンティーナ」では、イタリア各州の造り手を訪ね、味わい、厳選したワインだけをラインアップしています。今回は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の「ヴィーニャ・トラヴェルソ」が手がける「リボッラ・ジャッラ FCO 2021」をご紹介します。
イタリアの土着品種は赤も白もそれぞれ種類豊富で、ひとつ知るたびに、お気に入りが増えていくのが楽しみでなりません。「リボッラ・ジャッラ」も大好きなブドウのひとつ。オーストリア、スロヴェニアと国境を接するフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の全土で栽培される品種で、早くも13世紀から植えられていたそうです。
リボッラ・ジャッラのワインは、蜂蜜のような甘い香りをもち、柑橘系の爽やかな味わいとほのかな苦みが特徴的。程よく軽やかで繊細な味わいが幅広い料理に合わせやすく、日本の食卓になじみやすいと感じます。
ワイン好きの間で注目され、世界的にも高い評価を得ているフリウリの白ワイン。州のワイン生産量に占める白ワインの割合が85%と非常に高く、切磋琢磨され、洗練された白ワインの宝庫なのです。とりわけ高級白ワインの産地とされるのが、コッリオ・ゴリツィアーノ(コッリオ)、そして「ヴィーニャ・トラヴェルソ」のあるフリウリ・コッリ・オリエンターリです。
「トラヴェルソ」創設者のジャンカルロ氏が惚れ込んだ、コッリ・オリエンターリ地区のプレポットは、石灰性粘土と砂質石灰岩が交互に層を成す「ポンカ」土壌に恵まれています。豊かな風土に育まれた活力のあるブドウから、繊細で香り高いワインを生み出してきました。
ワインを味わってみましょう。色調はごく淡いレモンイエローで、グレープフルーツや黄色いリンゴ、白桃、蜂蜜、レモングラス、かすかにアーモンドの香りをもち、いきいきとしてフレッシュな印象です。口に含むと、優しく繊細な口当たりで、酸はなめらかでのびやか。ハーブのような複雑な味わいもあり、のど越しには苦みを伴った旨味を感じます。
フレッシュで酸味と苦みを持ち合わせたワインに、今回は「野菜づくし」のメニューを合わせてみたいと思います。生まれ育った北海道が美味しい野菜の宝庫だったこと、3年ほど前に「野菜ソムリエ」の資格を取ったこともあって、日々の食卓は野菜中心です。こんなデリケートなワインなら、季節野菜の持ち味を生かした、優しい味わいの料理に寄り添ってくれそうです。
高知から届いた文旦を、大根、人参、ベビーリーフとともにサラダに。生姜とアーモンド、クルミをフードプロセッサーにかけて作ったドレッシングが美味しさの秘訣です。みずみずしい文旦は、ワインの味わいとリンクする甘さと苦味を秘め、野菜のシャキシャキとした歯ごたえが爽快。生姜とナッツのドレッシングが味わいをピリッと引き締め、程よいコクを添えてくれます。
脇役になりがちな長ネギは、5分ほど茹でてからオリーブオイル、ビネガーでシンプルにマリネするだけで、立派なおつまみになります。ネギのとろりとした自然な甘みに、ワインの酸がいきいきと膨らむペアリングに。
最後は、新玉ねぎとパルミジャーノのオムレツ。バターでこんがり焼き上げたまろやかな味わいに、仕上げの粗塩でほんのりワイルドさを添えると、ワインのクリーンでフルーティーな味わいが引き立ちます。
生姜や長ネギをたっぷり使った料理に、ポカポカと身体が温まり、元気がわいてきました。塩味や油分のしっかり効いた「ワインのすすむ」料理もいいですが、季節野菜の味わいを生かした「優しいワイン献立」もまたいいものです。体調を崩しやすい季節の変わり目に、身体をいたわりながら楽しんでみてはいかがでしょう?
※参考文献:『日本ソムリエ協会 教本2023』
林茂著『和食で愉しむイタリアワイン』(万来舎)
「ヴィーニャ・トラヴェルソ」の「リボッラ・ジャッラFCO 2021」はこちら
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